砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
カリム・アリーの母ノーラは海賊船に囚われた異国の少女だった。彼女は王都の奴隷市にかけられる。
当時のハーレムには四人の王妃のほかに、数十人の愛妾がいた。その愛妾に仕える人間が、見目美しいノーラを宴の座興に買い上げたという。
そのまま大勢の前で性奴隷として陵辱されるはずだったが、ノーラは王の目に留まったのだ。
王の寵愛を受け、しかも待望の男子まで出産するが、処女(アズラー)でなかった彼女は妻にはなれなかった。
彼女は奴隷のまま、王妃たちに苛め抜かれた。
王子のいない王はカリムにアリーの名前を与え、王子にしようとした。
しかし、その矢先にノーラが亡くなる。カリムはわずか六つ――毒殺と噂が流れ、王はカリムを奴隷の身分に据え置いた。
「私の母上はノーラにそっくりだったらしい。父上は四人の王妃とすべての愛妾を追い出し、母上を正妃にした。母上はカリムをハーレムから神殿に移して守ってやったそうだ。その後、私が生まれ……父上が戦いの最中、砂漠で死んだのは今から十年前だ」
「陛下は誰からも、お命は狙われなかったのですか?」
「巫女の産んだ最強の神官(マー)を害そうという味方はおるまい。物心ついてからは、何者にも負けたことはない」
サクルの力強い言葉にリーンも安堵したようだ。
ホッとする様子を見ると、どうにも苛めてみたくなる。
「何者も、私に逆らうことなど許さない。わかっておるな、リーン」
当時のハーレムには四人の王妃のほかに、数十人の愛妾がいた。その愛妾に仕える人間が、見目美しいノーラを宴の座興に買い上げたという。
そのまま大勢の前で性奴隷として陵辱されるはずだったが、ノーラは王の目に留まったのだ。
王の寵愛を受け、しかも待望の男子まで出産するが、処女(アズラー)でなかった彼女は妻にはなれなかった。
彼女は奴隷のまま、王妃たちに苛め抜かれた。
王子のいない王はカリムにアリーの名前を与え、王子にしようとした。
しかし、その矢先にノーラが亡くなる。カリムはわずか六つ――毒殺と噂が流れ、王はカリムを奴隷の身分に据え置いた。
「私の母上はノーラにそっくりだったらしい。父上は四人の王妃とすべての愛妾を追い出し、母上を正妃にした。母上はカリムをハーレムから神殿に移して守ってやったそうだ。その後、私が生まれ……父上が戦いの最中、砂漠で死んだのは今から十年前だ」
「陛下は誰からも、お命は狙われなかったのですか?」
「巫女の産んだ最強の神官(マー)を害そうという味方はおるまい。物心ついてからは、何者にも負けたことはない」
サクルの力強い言葉にリーンも安堵したようだ。
ホッとする様子を見ると、どうにも苛めてみたくなる。
「何者も、私に逆らうことなど許さない。わかっておるな、リーン」