砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
これでしばらくは肘が痺れたようになり、剣は持てないはず……。

そう思ったとき、もう片方の手で懐から取り出した砂をシャーヒーンの目に投げつけたのだ。


予想外の……一国の王子らしからぬ卑怯な反撃にシャーヒーンはたじろいだ。

その隙に短剣を取り上げられ、タイルの上にうつぶせに押し倒される。


「この私に刃向かうとは……ただでは済まさんぞ」


シャーヒーンが本気になれば最後の手段がある。

彼女は余裕でことの成り行きを窺う。

すると、スワイドは多くの男と同じでシャーヒーンの躰に興味を示してきた。そしてよからぬことを考えたのか、ふいに彼女の薄手の衣装を引き裂いたのだ。


愚かさも過ぎると吐き気を覚える。

彼女が耐え切れず、意識を解き放つ寸前――。



「スワイド殿下、シャーヒーン殿から離れてください。あなたのなさっていることは許されぬことです!」


腰のシャムシールを抜き、スワイドの首に当てていたのは衛兵アミーンだった。


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