砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
「激しく、だと? そのようなことを言えば、悔やむ羽目になるぞ」


サクルはリーンの衣装を裂くように脱がせた。

乳房を露わにすると、小刻みに震える先端を口に含む。舌の上で転がされ、リーンはゾクゾクする快感に身を委ねながら、サクルの頭を掻き抱いた。


「ああっ! サクルさま……サクルさまぁ」


リーンは正真正銘、こういった男女の秘め事とは無縁に生きてきた。

バスィールにおいても、クアルンと同じく、婚前婚外交渉は厳しく戒められている。

その傾向は砂漠に近づくほど強い。だが、宮殿のある東部地方では、身分が下がるほどに処女(アズラー)にはこだわらない者が多かった。

そのため、若い男女は簡単にお互いを与える。

万にひとつ、親や周囲に知られたり身籠ったりした場合は、女性の純潔を奪ったときに結婚の誓いを立てた、と言えば許されるからだ。

しかし、リーンはほとんどの時間、母と共に宮殿で過ごしてきた。さすがに、大公妃やその娘であるレイラーの身近で、そういった不謹慎な者はいない。

母がリーンを守るため宮殿に入ったのはそういう意味もあったのだろう。


ほんのひと月前まで、リーンは何も知らなかった。

それが今は、自ら愛撫を求めてしまうほど……。


「わたしは……淫らな女なのです。血の繋がった妹を排除しても、兄を処刑されても、それでもあなたを求めてしまう。わたしは……わたしは……はぁぅ!」


考えれば考えるほど罪深い。

サクルの言葉を信じ、無邪気に大公が父であることを喜んだが、リーンが神に背いた結果の命であることには違いないのではなかろうか?

大公は妃と別れていた間にリーンの母と深い関係になったというのは本当か?

母は側室となることを拒み、侍女として勤め続けたというが……。本当に十三年もの間、大公に求められることはなかったのだろうか?


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