砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)

(3)溺れた夜

シャーヒーンは少し背伸びをして、唇を重ねる。

アミーンの首に手を回せば、自然と彼はうつむき加減になり、さらに口づけを交わしやすい高さになった。

人型に戻ったばかり、当然、一糸纏わぬ姿だ。

浴槽から上がったばかりの肢体は雫を滴らせ、匂い立つほどの色香を漂わせていた。それはまるで、泡から生まれ出たばかりの女神(イラーハ)のごとき美しさ。艶めく肌、張りのある乳房をアミーンの身体に押し当てる。

布越しに感じる女の躰に、アミーンの息は荒くなった。


「シャ、シャーヒーンど、の……これは……このような真似は」


唇を離すと、アミーンはシャーヒーンを押しのけようとする。

だが、彼女の手はトーブの留めを外し、アミーンの上半身を露わにした。ストンと肩から足もとにトーブが落ち、アミーンは唖然としていた。


彼は砂漠の男と呼ぶに相応しい逞しい身体をしている。

隆起した筋肉を指先でなぞり、乳首を舌で捕らえた。軽く甘噛みして刺激を与えてやるだけで、男の本能は目を覚ます。それはお堅いアミーンといえども同じだ。

シャーヒーンの指の動きに合わせて、息が上がり始め……やがて膝をついた。


「こんな……ダメです。私は……」


――大丈夫。あなたを傷つけたりしません。ただ、お礼をしたいだけ……。


「お、お礼なんて……でも、これは」


――さあ、身体を楽にして……それとも、私は醜いですか?


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