砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
「申し訳……ありません」

「見てみろ、侍女たちも目のやり場に困っている。マルヤムたちに聞かれた時も、本当は嬉しかったのではあるまいな? 」

「そんなこと……違います、今も、陛下が……」


リーンの黒く波打つ髪が、たとえようもなく美しい。羞恥に震える長いまつげも、涙を浮かべるブラウンの瞳まで、愛らしくて堪らなくなる。


「私が、なんだ?」


その長い黒髪を指で弄びながら、サクルはリーンの口から言わせたくなった。


「陛下がわたしを……こんなふうにしてしまわれて」

「こんなふうとは、どんなふうだ?」

「色々……恥ずかしいことを、お教えになったのは陛下ではありませんか」


リーンの震える唇が目に映り、サクルはさらなる遊戯を思いつく。


(そういえば、アレはまだだったな。ちょうどいい……)


サクルは胡坐を組み、絨緞の上に座り直すと、侍女たちに向かって手を振った。

彼女らはサッと立ち上がり、部屋から出て行く。


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