砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
「あの……陛下?」

「人払いした、サクルと呼べ」


本当はリーンには常に名前で呼ばれていたいと思う。

ハーレムであればこんな気遣いはせずに済むが、その反面、面倒な規則もあった。

 
(しばらくは、ふたりきりで砂漠にいるとしよう)


「サクルさま……」


彼女はすぐに、サクルの胸元に手を伸ばしてきた。息遣いも荒い。どうやらリーン自身も収まりがつかず、人払いをしたことで、この先を期待しているらしい。


「リーン、そんなに私が欲しいか?」


潤んだ瞳でサクルを見上げ、コクンとうなずいた。


「よかろう。お前の手で取り出してみよ」


命じられるままに、リーンの小さな手がサクルの衣装を解き始める。

サクルは逸る気持ちを懸命に抑えつつ、


「どうだ? まだ充分ではなかろう? そういったときはどうするか、覚えているか?」

「……はい……」


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