砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
王都に行けばハーレムには何人もの女性がいる。
サクルはリーンを正妃だと言ってくれるが、果たして、ハーレムでも同じように言ってくれるだろうか?
侍女のマルヤムから、ハーレムでの正妃の所作を色々教わった。
現在のハーレムに側室と認められている女性はいない。だが、ハーレムで過ごすすべての女性を、サクルは自由にする権利があるという。
彼が別の女性を名指ししたら、リーンはそれを黙って見送らなければならない。
すべての女性たちが揉めごとを起こさないように注意を怠らず、管理するのも正妃の役割である、と。
ハーレムは王の憩いの場所、そして、後継者である男子を育む場所だとマルヤムは言った。
(もっとしっかりしなくては。こんなことじゃ、神殿に住まわれる王太后さまに、正妃に相応しくないと思われてしまう。本当の王女のように、もっと……)
自分がちゃんとした王女であったなら、そう考えるとさらに気が重くなった。
侍女あがりの……本物かどうかわからない王女だと、ハーレムの女性たちが知っていたとしたら?
誰も、リーンのことを正妃と認めてくれないかもしれない。
そうなったら、今以上にサクルの心はリーンから離れていくだろう。
ふと気づくと、リーンは砂から湧き出るオアシスの中央に座り込んでいた。
リーンの周囲はどんどん水で満たされていく。
立たなければ、溺れてしまう――そう思うのに立てないのだ。やがて、トプンと顔が水に浸かり……。
サクルはリーンを正妃だと言ってくれるが、果たして、ハーレムでも同じように言ってくれるだろうか?
侍女のマルヤムから、ハーレムでの正妃の所作を色々教わった。
現在のハーレムに側室と認められている女性はいない。だが、ハーレムで過ごすすべての女性を、サクルは自由にする権利があるという。
彼が別の女性を名指ししたら、リーンはそれを黙って見送らなければならない。
すべての女性たちが揉めごとを起こさないように注意を怠らず、管理するのも正妃の役割である、と。
ハーレムは王の憩いの場所、そして、後継者である男子を育む場所だとマルヤムは言った。
(もっとしっかりしなくては。こんなことじゃ、神殿に住まわれる王太后さまに、正妃に相応しくないと思われてしまう。本当の王女のように、もっと……)
自分がちゃんとした王女であったなら、そう考えるとさらに気が重くなった。
侍女あがりの……本物かどうかわからない王女だと、ハーレムの女性たちが知っていたとしたら?
誰も、リーンのことを正妃と認めてくれないかもしれない。
そうなったら、今以上にサクルの心はリーンから離れていくだろう。
ふと気づくと、リーンは砂から湧き出るオアシスの中央に座り込んでいた。
リーンの周囲はどんどん水で満たされていく。
立たなければ、溺れてしまう――そう思うのに立てないのだ。やがて、トプンと顔が水に浸かり……。