砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
(そんな……バカな。入ってきたのだから、ないはずがないわ)
岩の大きさは宮殿並みではあったが、内部はそれほど広いわけではない。
それに、中に入ったとき、左手にオアシスの泉が、その奥にテントが見えた。その位置関係を思い出しつつ、岩の裂け目を探すのだが……。
やっぱりみつからない。
念のため、歩ける範囲内はすべて壁伝いに歩くが、それでも岩に亀裂ひとつ入っていないのだ。
(ありえないわ。じゃあ、わたしはどうしてここにいるの?)
そのとき、リーンは何かが聞こえた気がして、耳を澄ました。
『リーン、リーン、私だ。おまえの兄、スワイドだ』
それはどこから聞こえてくる声かわからない。
リーンは驚き、周囲をきょろきょろしながら尋ねた。
「スワイド王子!? どうして……あの……流砂の谷は……」
『私たちの父上、大公陛下が先手を打って、兵士を回してくださったのだ。――正直に告白しよう。私は大公位を欲するあまり、愚かにも罪を犯してしまった。衝動的に国から逃げてしまったが、父上は私を見捨ててはいなかったのだ』
耳に直接響くスワイドの声に、リーンはなんと応じればいいのか困惑していた。
岩の大きさは宮殿並みではあったが、内部はそれほど広いわけではない。
それに、中に入ったとき、左手にオアシスの泉が、その奥にテントが見えた。その位置関係を思い出しつつ、岩の裂け目を探すのだが……。
やっぱりみつからない。
念のため、歩ける範囲内はすべて壁伝いに歩くが、それでも岩に亀裂ひとつ入っていないのだ。
(ありえないわ。じゃあ、わたしはどうしてここにいるの?)
そのとき、リーンは何かが聞こえた気がして、耳を澄ました。
『リーン、リーン、私だ。おまえの兄、スワイドだ』
それはどこから聞こえてくる声かわからない。
リーンは驚き、周囲をきょろきょろしながら尋ねた。
「スワイド王子!? どうして……あの……流砂の谷は……」
『私たちの父上、大公陛下が先手を打って、兵士を回してくださったのだ。――正直に告白しよう。私は大公位を欲するあまり、愚かにも罪を犯してしまった。衝動的に国から逃げてしまったが、父上は私を見捨ててはいなかったのだ』
耳に直接響くスワイドの声に、リーンはなんと応じればいいのか困惑していた。