砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
それはまるで死体からえぐり出したかのようだ。
赤い目玉は血が滴り、地面を赤黒く染めていく。
リーンは声も上げられず、それでいて、食い入るように目玉を凝視していた。見たくて見ているわけではない。ただ、目を離すことができなかった。
目玉に意識を取られたとき、岩の裂け目から手が伸び――ふいにリーンの腕を掴んだ。
「きゃ! い……や、離して」
すると、目玉が笑った気がした。
それはいやらしい感情を露わにした、妬みと憎しみの込められた眼。どこかで見たことのある、その目の主は……。
ボンヤリと輪郭らしきものができ、暗い闇を背景に鼻や口が浮かびはじめた。
それは――スワイドの顔だった。
両の目は真っ赤に染まり、血を滴らせたままである。
そして、彼の顔は恐怖に歪んだ。
「おまえのせいだ! おまえのせいで俺は死んだんだ! おまえも死ねっ!」
そう叫ぶと、尋常ならざる力でリーンの身体を岩の裂け目から外に連れ出そうとした。
「いやぁっ! サクルさま、サクルさまっ、助けて!」
スワイドの顔はニタリと笑う。
「そうだ……おまえの心に忍び込み、名を探り当てたぞ。“サクル”だ。これで狂王の命を奪える」
その言葉を聞いた瞬間、リーンの意識は闇に吸い込まれていった。
赤い目玉は血が滴り、地面を赤黒く染めていく。
リーンは声も上げられず、それでいて、食い入るように目玉を凝視していた。見たくて見ているわけではない。ただ、目を離すことができなかった。
目玉に意識を取られたとき、岩の裂け目から手が伸び――ふいにリーンの腕を掴んだ。
「きゃ! い……や、離して」
すると、目玉が笑った気がした。
それはいやらしい感情を露わにした、妬みと憎しみの込められた眼。どこかで見たことのある、その目の主は……。
ボンヤリと輪郭らしきものができ、暗い闇を背景に鼻や口が浮かびはじめた。
それは――スワイドの顔だった。
両の目は真っ赤に染まり、血を滴らせたままである。
そして、彼の顔は恐怖に歪んだ。
「おまえのせいだ! おまえのせいで俺は死んだんだ! おまえも死ねっ!」
そう叫ぶと、尋常ならざる力でリーンの身体を岩の裂け目から外に連れ出そうとした。
「いやぁっ! サクルさま、サクルさまっ、助けて!」
スワイドの顔はニタリと笑う。
「そうだ……おまえの心に忍び込み、名を探り当てたぞ。“サクル”だ。これで狂王の命を奪える」
その言葉を聞いた瞬間、リーンの意識は闇に吸い込まれていった。