①憑き物落とし~『怨炎繋系』~

『邂逅』

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 ――ほう。

 ――気を失う程の圧力があるものなのか。
 生憎、僕は特に突出した感覚を持ち合わせていない。そのような威嚇は無意味だと知るべきだ。

 わかるか。僕のような、まさに『矛盾』の塊がお前達の天敵なのだということを。

 お前達は、存在そのものが、矛盾している。だから、それに対抗するには、常識を捨て、自分も矛盾を受け入れなくてはならない。そうして初めて、お前達と同じ場所に立てる。

「大丈夫ですか」

「大丈夫なわけねぇだろ! 俺は夕浬を連れて戻る!」

「岡田さん、落ち着いてください」

「落ち着けだと!?」

「彼女がここにいなければ、意味がありません」


 どこだ。どこにいる? 僕の存在を理解したのならば、さっさと姿を現せばいいだろう。


「……説明不足かもしれませんね」

「ああ、あんたははじめからそうだ! 俺らにはどうするつもりな
のかも全くわからない!」

「僕は、この仕事を始める前までは大学院で心理学を学んでいました」

「心理学?」

「はい、人の心の変動を知る学問です」

「あんなもん学んで何になるってんだ!」

「そうですね、僕のような考えに至る人は極わずかでしょうね。
――僕は、霊の心理を読む」

「霊の心理?」

「はい、彼らは実体のないもの。しかし、その行動には必ず理由があり、人に影響を及ぼす。彼らは思念の塊。だから、『行動理由』が『存在理由』」

「一体、どうするってんだよ」

「霊とはその形態に過ぎない。元は人なんです。ならば、通用するでしょう。単純なことです。『存在理由』を失った霊は、この世にはいられない。わかりやすい法則です」

「たしかに、わかりやすいけど……」


「僕は、それを壊す」


 ――僕は、あの時からこの世界に入ると決めた。その時見つけたこの理論は、僕の信念。自信を持てる。これは、絶対的なものであると。
 最初は、全くわからなかった。しかし、こんな不可思議の結晶のような存在にさえ、法則は存在する。それを導き出し、アクを取り除いていく。

 特別な力を持たない僕にとって、唯一にして最後の道。

 ――僕は、歩みを止めるわけにはいかない。

 『アイツ』を、この手で消すまでは。


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