①憑き物落とし~『怨炎繋系』~
 もう不思議と、感情が湧き上がることがなかった。心さえ、焼かれてしまったのかもしれない。

 その上から、アイツの禍々しい念がのしかかってくる。

 しかしそれと同時に理解する。
 

 ――そうか。
 

 ようやく、全ての謎が解けた。


 コイツの……正体。

 ――違ったんだ。

 俺達は、とんでもない勘違いをしてしまった……。

 20年前の事件から因果は絡まって――絡まって、ついに逃げられないように運命を掌握するまでに至った。


 つたえな……きゃ……。

 コイツは、最悪だ。

 止められなくなる。
 
 気づいてくれ。 頼む――。 


 ――しかし。

 灰が風に舞うように少しずつ、ゆっくりと意識が消失していく。

 ――なにもかもが、無情だった。



 ――ああ、消えるんだな。

 こうなるとやっぱり、怖い。恐ろしくてたまらない。


 ――死にたくない。

 生きたいたい。


 『無』に侵食されていくのがわかる。


 俺は、なくなっちゃうんだ……。



 もう、考えることもできない。





 最後に、見えたのは――。
 
 




 ああ……夕浬……。





 お前は、生きて――。






 あ……。して……。る。









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