①憑き物落とし~『怨炎繋系』~
 きっかけは――まさに今の一言。
 
 そう……ようやく、わかってきたのだ。

 僕としたことが冷静ではなかったようだ。

 痛みが脳天を貫いているせいだろうか。存外、先程よりも思考回路がスッキリしている。僕達はまんまとこの化物にハメられたというわけか……。

 僕は真相にだけ進路をとっていればよかったのだ。

 ――そうして真実を求めること以外、なにもできない、無能の出来損ないなのだから。


「わかったよ、お前の正体。存在の理由が」


 言い放つ僕に、奴は真っ黒な歯をむき、獣ように低く唸り声を上げながら距離をとる。

 ……もう、完全に『ヒト』としての原形を失っている。

 化物に成り果ててしまったのか。『媒体』を切り離してしまえば、徐々に崩壊していく自我を止めることはできない。この状態になることも受け入れていたのだろうが……。


「――本当の名前も、わかっている」



 こいつの正体を導き出すためのピースは。


 『抜け落ちた記憶』。


 『臍の緒という媒体の本質』。


 『浅神箕輪の真実』。


 ――そして岡田玲二という『自己犠牲』……。否。『慈愛』の異質者がいなければたどり着くことができなかった。


 こいつの正体、こいつの存在理由。

 それを全て理解した今、あとはもうそれを壊すだけでいい。



「お前は……『―― ― ――』――だ」
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