①憑き物落とし~『怨炎繋系』~


「え、なんですか?」


「あなたが寝たきりの時に、瑞町夕浬でもない、浅神夕浬でもない、あなたの本当の名前を箕輪さんから伝えてくれと頼まれていたんです」


 私の、本当の名前?


 ――そうか、これまで私が本名だと思い込んでいたものは本来姉の名前で、私のものではないのだ。







「――『浅神小宵』」




 浅神……小宵……。


 それが、私の真名。

 


「それがあなたの本当の名前です。浅神箕輪の娘で、浅神夕浬の妹の。姉の『夕』と妹の『宵』。名前まで繋がっているなんてね。良い名前じゃないですか」




 背中でそう言い残すと、彼は手を振り去っていく。



 帰るのだろう。



 彼の生きる場所であるあの、寂れたビルの事務所へと。



 
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