①憑き物落とし~『怨炎繋系』~
去っていくその背中を眺めながら、私は決意する。
――私は、この先をどう生きていけばいいのか。
ずっと考えていた。
考えて考えて、ようやく答えが見つかった。
こうするべきなのだと、運命なのだと、私は確信をもって進むことができる。
見ていて、お母さん。
頑張るよ、玲二。
――行くよ、お姉ちゃん。
「ちょっと、灰川さん! 待って!」
声をかけるが、彼は止まらない。
聞こえているはずなのに。
「こら! 無視するな! 灰川倫介! このスカしたワカメ頭!」
「……なんですか。小宵さん、名誉毀損で起訴しますよ。これは断じてワカメじゃない。言いがかりはやめていただきたい」
「私、この数週間寝たきりだったじゃないですか……」
「ええ、それが?」
「だからバイト、クビになっちゃったんですよ、無断で休んだから。……困りました」
「……つまり?」
「――どこかいい働き口、紹介してくれませんか?」
私の目を見返して、彼は深くため息を吐き出しながら頭をぼりぼりとかく。
きっと、先程私の声を無視した時からこうなる察しはついていたのだろう。お見通しだ、相変わらず。
でも、あなたならわかるでしょう。
こうするしかないってことも。
こうするべきなんだってことも。
――彼は、前を向き再び歩きだしながら、静かに背中越しで答えた。
「……まずは面接からだな」
――夕暮れの中を。
『夕』と『宵』のまじる中を。
一陣の風が通りぬけていく。
この新しい運命の中を進んでいこう。
その先になにがあっても。
なにもなくても。
――私達はもう、そう決めちゃったんだから。
『憑き物落とし・第一章~怨炎繋系~』 完