①憑き物落とし~『怨炎繋系』~
「……あの、安田さん」
「なんですか?」
「その、たくさん……いたんですよね?」
「ええ……4人いました」
「その人達の特徴教えてくれませんか?」
「小学生くらいの男の子、中年の男性に、同じく中年の女性、そして、――老婆」
「たしかに、ここに越してから、その人達を見かけたことはあります。……でも、違うんです。その人達はただ、『見かけた』だけなんです」
「……違う?」
「……違うんです、合わせると全部で5人なんです。あと、一人。若い女がいるはずです」
「女……?」
「そういやお前、女って言ってたな」
「まさか………!?」
目を見開いて、安田さんは急いで私の部屋に戻る。
「安田さん!?」
私達も思わずその後を追いかけて中に入る。
「最初は、多数の霊しか見えなかったが……この者達は、引力で引き寄せられただけなのか」
「……引力?」
「とある霊が一箇所に留まると、やがて土地との因果から強力な思念を持つ。これが地縛霊。その陰の気には浮遊している者達が引き寄せられるものなんです」
「じゃあ……」
「――ええ、まだどこかに、彼女はいます」
私は息を飲んだ。
ああ――ほんとうだ。
いる――視てる。
私を………視てる。
「ベッドの……し、下……………」
「……えっ」
困惑する私と状況を理解できていない怜二を他所に、安田さんは一人、経を唱え始める。
「危害を加えないとも限らない! 二人は外に出ていてください!」
怜二に連れられて、私は外へ出る。怜二が必死に青ざめた私に何か言っているが、駄目だ。何も聞こえてこない。
あの、禍々しい視線が、私の網膜に焼き付いて離れないのだ。
「――黒かった」
「え?」
「なんで……あんなに黒いの!?」
「どうしたんだよ! 大丈夫かよ……夕浬!」
「……何か、呟いてたの」
「……何をだよ」
聞こえたわけじゃない。
でも、口が動いて、それで私をじっと見ていて。
そう。こう言った。
「『逃がさない』」
「なんですか?」
「その、たくさん……いたんですよね?」
「ええ……4人いました」
「その人達の特徴教えてくれませんか?」
「小学生くらいの男の子、中年の男性に、同じく中年の女性、そして、――老婆」
「たしかに、ここに越してから、その人達を見かけたことはあります。……でも、違うんです。その人達はただ、『見かけた』だけなんです」
「……違う?」
「……違うんです、合わせると全部で5人なんです。あと、一人。若い女がいるはずです」
「女……?」
「そういやお前、女って言ってたな」
「まさか………!?」
目を見開いて、安田さんは急いで私の部屋に戻る。
「安田さん!?」
私達も思わずその後を追いかけて中に入る。
「最初は、多数の霊しか見えなかったが……この者達は、引力で引き寄せられただけなのか」
「……引力?」
「とある霊が一箇所に留まると、やがて土地との因果から強力な思念を持つ。これが地縛霊。その陰の気には浮遊している者達が引き寄せられるものなんです」
「じゃあ……」
「――ええ、まだどこかに、彼女はいます」
私は息を飲んだ。
ああ――ほんとうだ。
いる――視てる。
私を………視てる。
「ベッドの……し、下……………」
「……えっ」
困惑する私と状況を理解できていない怜二を他所に、安田さんは一人、経を唱え始める。
「危害を加えないとも限らない! 二人は外に出ていてください!」
怜二に連れられて、私は外へ出る。怜二が必死に青ざめた私に何か言っているが、駄目だ。何も聞こえてこない。
あの、禍々しい視線が、私の網膜に焼き付いて離れないのだ。
「――黒かった」
「え?」
「なんで……あんなに黒いの!?」
「どうしたんだよ! 大丈夫かよ……夕浬!」
「……何か、呟いてたの」
「……何をだよ」
聞こえたわけじゃない。
でも、口が動いて、それで私をじっと見ていて。
そう。こう言った。
「『逃がさない』」