愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
~*~*~*~*~
「太一郎さん……わたし、泉沢さまの許へ行くほうがいいのでしょうか? この子にとって、実の父になるわけですから……」
太一郎が動けるようになり、伊丹も引き上げた。
ふたりきりになった途端、奈那子がそんなことを言い出したのである。
「お前がそうしたいなら、俺に止める資格なんてねぇけど」
「わたしは……わたしは……」
親に言われてか、それとも保身のためか……どちらにせよ、太一郎には清二が奈那子を愛しているとは思えなかった。
婚約していたとはいえ、強引に奈那子を奪い、それきりだと言う。
政治の世界は複雑で、太一郎には何が常識だか計り知れない。だが、もし桐生代議士と泉沢が再び手を組んだら? あるいは、清二側も桐生との関係を断ちたいと思ったら?
奈那子の子供は誰にも望まれず、闇に葬られる可能性だってある。
同じように奈那子を傷つけた太一郎に、清二を責める資格はない。だが奈那子が望むなら、彼女と子供を守る資格は得られるはずだ。
「あの男、お前の親父さんの秘書だったよな?」
「はい。白石さんはいつも地元の事務所に詰めている方です。それと……部屋に来られたとき、どこの馬の骨ともわからない男と一緒に暮らすなんて……そんなふうにおっしゃってました」
もし、藤原太一郎だと知っていれば、『またあの男と』そう言われるはずだ。
「太一郎さん……わたし、泉沢さまの許へ行くほうがいいのでしょうか? この子にとって、実の父になるわけですから……」
太一郎が動けるようになり、伊丹も引き上げた。
ふたりきりになった途端、奈那子がそんなことを言い出したのである。
「お前がそうしたいなら、俺に止める資格なんてねぇけど」
「わたしは……わたしは……」
親に言われてか、それとも保身のためか……どちらにせよ、太一郎には清二が奈那子を愛しているとは思えなかった。
婚約していたとはいえ、強引に奈那子を奪い、それきりだと言う。
政治の世界は複雑で、太一郎には何が常識だか計り知れない。だが、もし桐生代議士と泉沢が再び手を組んだら? あるいは、清二側も桐生との関係を断ちたいと思ったら?
奈那子の子供は誰にも望まれず、闇に葬られる可能性だってある。
同じように奈那子を傷つけた太一郎に、清二を責める資格はない。だが奈那子が望むなら、彼女と子供を守る資格は得られるはずだ。
「あの男、お前の親父さんの秘書だったよな?」
「はい。白石さんはいつも地元の事務所に詰めている方です。それと……部屋に来られたとき、どこの馬の骨ともわからない男と一緒に暮らすなんて……そんなふうにおっしゃってました」
もし、藤原太一郎だと知っていれば、『またあの男と』そう言われるはずだ。