愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
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夜十一時頃、太一郎が着替えようとしたとき、携帯が鳴った。
ときは眠るのが早い。自然に太一郎らも早めに布団に入るようになった。
太一郎は慌てて携帯を掴み、奈那子に目をやった。最近は上向きで眠るのは苦しいらしい。彼女は襖の方を向き……すでに寝息を立てているようだ。
ときと奈那子を起こさないように、太一郎は素早く外に出たのだった。
『太一郎……太一郎? お願い……すぐに来て!』
――茜だった。
太一郎は深く息を吐き、苛々した様子で地面を蹴った。
「お前なぁ。かけてくんなって言っただろう」
『わかってる、でも』
「切るぞ」
『待って、お願い待って。いるの、あの男が。家の中にいるの。いま、私ひとりなの。どうしたらいいのかわからない……』
茜の話によると――。
彼女の母親は、例の菓子職人・新田と旅行に出たらしい。茜自身は、例のろくでもない計画を思いつき、自宅に残った。彼女の弟妹は、母親が途中で実家に預ける予定だったという。
ところが、中学一年の妹が急に熱を出し、母親も実家に泊まることになった。母親は実家の両親に『友人と旅行に行く』と話した手前、まさか相手が男とは言えない。
結果、母親から『一度家に帰ってくれる? あとで連絡するから』そう言われて、新田は帰って来た。
ところが新田は、自分の部屋には戻らなかった。茜がひとりでいるのを承知で、母親から預かっていた合鍵を使い、部屋に上がり込んで来たという。
夜十一時頃、太一郎が着替えようとしたとき、携帯が鳴った。
ときは眠るのが早い。自然に太一郎らも早めに布団に入るようになった。
太一郎は慌てて携帯を掴み、奈那子に目をやった。最近は上向きで眠るのは苦しいらしい。彼女は襖の方を向き……すでに寝息を立てているようだ。
ときと奈那子を起こさないように、太一郎は素早く外に出たのだった。
『太一郎……太一郎? お願い……すぐに来て!』
――茜だった。
太一郎は深く息を吐き、苛々した様子で地面を蹴った。
「お前なぁ。かけてくんなって言っただろう」
『わかってる、でも』
「切るぞ」
『待って、お願い待って。いるの、あの男が。家の中にいるの。いま、私ひとりなの。どうしたらいいのかわからない……』
茜の話によると――。
彼女の母親は、例の菓子職人・新田と旅行に出たらしい。茜自身は、例のろくでもない計画を思いつき、自宅に残った。彼女の弟妹は、母親が途中で実家に預ける予定だったという。
ところが、中学一年の妹が急に熱を出し、母親も実家に泊まることになった。母親は実家の両親に『友人と旅行に行く』と話した手前、まさか相手が男とは言えない。
結果、母親から『一度家に帰ってくれる? あとで連絡するから』そう言われて、新田は帰って来た。
ところが新田は、自分の部屋には戻らなかった。茜がひとりでいるのを承知で、母親から預かっていた合鍵を使い、部屋に上がり込んで来たという。