愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
本名の藤原太一郎で全部記入してあり、あとは奈那子の署名捺印を残すのみである。
「た、いちろう……さま?」
「さま、はやめろって」
「でも、茜さんは?」
「アイツは危なっかしいんだ。家庭環境もちょっと複雑で……それに、アイツはまだ十八だよ」
太一郎は一旦言葉を切ると、再び口を開いた。
「俺の罪は多分一生消えないと思う。やり直したり、幸せになろうなんてこと自体、間違ってるのかもしれない。でも、お前の子供の父親になりたい。叶うなら、償うチャンスが欲しい。お前とやり直したい。一年前の約束を守るとこから始めさせてくれ。でも……無理にとは」
次の瞬間、奈那子の瞳に涙が浮かんだ。
そして大粒の真珠が煌きながら頬を伝い始める。
「太一郎……さんが罪を犯したなら、わたしも一緒に償います。だから……あなたの妻にしてください」
泣きながら微笑む奈那子を、太一郎はソッと抱き寄せた。
雲が月を横切り、重なるふたりの影が消え――。
数分後、太一郎は駅に向かって走っていた。
茜の言葉はおそらく嘘だろう。だが、彼女の誘惑に乗るわけにはいかない。今度こそきっちり茜と話し、太一郎に奈那子の許を離れる気がないことをわかってもらう。
このときの太一郎に偽りは欠片もなかった。
「た、いちろう……さま?」
「さま、はやめろって」
「でも、茜さんは?」
「アイツは危なっかしいんだ。家庭環境もちょっと複雑で……それに、アイツはまだ十八だよ」
太一郎は一旦言葉を切ると、再び口を開いた。
「俺の罪は多分一生消えないと思う。やり直したり、幸せになろうなんてこと自体、間違ってるのかもしれない。でも、お前の子供の父親になりたい。叶うなら、償うチャンスが欲しい。お前とやり直したい。一年前の約束を守るとこから始めさせてくれ。でも……無理にとは」
次の瞬間、奈那子の瞳に涙が浮かんだ。
そして大粒の真珠が煌きながら頬を伝い始める。
「太一郎……さんが罪を犯したなら、わたしも一緒に償います。だから……あなたの妻にしてください」
泣きながら微笑む奈那子を、太一郎はソッと抱き寄せた。
雲が月を横切り、重なるふたりの影が消え――。
数分後、太一郎は駅に向かって走っていた。
茜の言葉はおそらく嘘だろう。だが、彼女の誘惑に乗るわけにはいかない。今度こそきっちり茜と話し、太一郎に奈那子の許を離れる気がないことをわかってもらう。
このときの太一郎に偽りは欠片もなかった。