愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
(23)悲劇
太一郎が高田馬場に着いたとき、すでに〇時半を回っていた。
和菓子屋『さえき』のビルまでは二キロ近くある。走って行こうとしたとき、駅から程近い橋の上に茜の姿を見つけたのだった。
――嘘でよかった。
ホッと胸を撫で下ろした、と同時にやはり憤りが込み上げてくる。
こんな場所で、しかもこんな時間に、未成年の少女がひとりでいていいはずがない。
「おいっ! 茜、お前なぁ。いい加減にしねぇと」
太一郎の声にビクッとして茜が振り返った。
その一瞬、背後を走り抜けた車のヘッドライトが彼女の顔を照らし出す。それを見て、太一郎は絶句した。
茜は嗚咽を上げ泣きじゃくり、口元が赤く見えるのは……血、だろうか。髪は掴まれ引き摺られたように乱れている。身体に張り付いたTシャツにショートパンツ……着衣に乱れた様子はない。だが、茜は裸足だった。
「ど、どうしたんだ? 殴られたのか? すぐに警察に行こう……いや、病院に」
「だ……め……」
「お前、まだそんなこと言ってんのかっ!?」
大声で怒鳴った瞬間、茜の身体は痙攣したように震えた。
以前、北脇に襲われたと嘘をついたときとは様子が違う。あのとき茜は、自分から太一郎に近づいてきた。
だが今は……。
和菓子屋『さえき』のビルまでは二キロ近くある。走って行こうとしたとき、駅から程近い橋の上に茜の姿を見つけたのだった。
――嘘でよかった。
ホッと胸を撫で下ろした、と同時にやはり憤りが込み上げてくる。
こんな場所で、しかもこんな時間に、未成年の少女がひとりでいていいはずがない。
「おいっ! 茜、お前なぁ。いい加減にしねぇと」
太一郎の声にビクッとして茜が振り返った。
その一瞬、背後を走り抜けた車のヘッドライトが彼女の顔を照らし出す。それを見て、太一郎は絶句した。
茜は嗚咽を上げ泣きじゃくり、口元が赤く見えるのは……血、だろうか。髪は掴まれ引き摺られたように乱れている。身体に張り付いたTシャツにショートパンツ……着衣に乱れた様子はない。だが、茜は裸足だった。
「ど、どうしたんだ? 殴られたのか? すぐに警察に行こう……いや、病院に」
「だ……め……」
「お前、まだそんなこと言ってんのかっ!?」
大声で怒鳴った瞬間、茜の身体は痙攣したように震えた。
以前、北脇に襲われたと嘘をついたときとは様子が違う。あのとき茜は、自分から太一郎に近づいてきた。
だが今は……。