愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
茜は太一郎が自動販売機で買ってきたミネラルウォーターで口をすすぎ、ようやく言葉を繋ぎ始める。
「あの男は怒って……私に飛びついてきたの。怖くて……暴れて……そのときに突き飛ばしたら……動かなくなって……」
地面に座り込む茜の横に、太一郎は腰を下ろした。
見るに見かねて、髪を撫で、そっと整えてやる。
「頭を打ったみたいだった。血が出てて……それも結構たくさん」
「正当防衛だ。お前のせいじゃない。だから警察に」
太一郎が茜を宥めようとした途端、彼女は血走った目で叫び始めた。
「誰がそれを信じてくれるのっ!? 太一郎だって信じなかったでしょ? きっと、誰も信じてくれない。だって私、適当に男と遊んでる今時の女子高生って思われてるもの。アイツ、周りにいい顔してたから……私を襲うわけないって言われるよ。それにお母さんも……私が新田を殺したって知ったら、恨むに決まってる!」
そんなわけがないだろう……と、太一郎には言えなかった。
無条件で母親の愛を信じられるほど、彼自身、愛された記憶がない。娘より男に対する愛情を優先させる母親がいないと、断言できないのだ。
茜は太一郎に身を寄せ、熱に浮かされたように呟き続ける。
「どうしよう……殺すつもりなんてなかったの。ホントよ……ホントに」
不安そうに見送る奈那子に『始発で戻るから待っててくれ』と告げてここまで来た。
だが、その約束を破ってしまいそうな予感に、心の中で詫びる太一郎だった。
「あの男は怒って……私に飛びついてきたの。怖くて……暴れて……そのときに突き飛ばしたら……動かなくなって……」
地面に座り込む茜の横に、太一郎は腰を下ろした。
見るに見かねて、髪を撫で、そっと整えてやる。
「頭を打ったみたいだった。血が出てて……それも結構たくさん」
「正当防衛だ。お前のせいじゃない。だから警察に」
太一郎が茜を宥めようとした途端、彼女は血走った目で叫び始めた。
「誰がそれを信じてくれるのっ!? 太一郎だって信じなかったでしょ? きっと、誰も信じてくれない。だって私、適当に男と遊んでる今時の女子高生って思われてるもの。アイツ、周りにいい顔してたから……私を襲うわけないって言われるよ。それにお母さんも……私が新田を殺したって知ったら、恨むに決まってる!」
そんなわけがないだろう……と、太一郎には言えなかった。
無条件で母親の愛を信じられるほど、彼自身、愛された記憶がない。娘より男に対する愛情を優先させる母親がいないと、断言できないのだ。
茜は太一郎に身を寄せ、熱に浮かされたように呟き続ける。
「どうしよう……殺すつもりなんてなかったの。ホントよ……ホントに」
不安そうに見送る奈那子に『始発で戻るから待っててくれ』と告げてここまで来た。
だが、その約束を破ってしまいそうな予感に、心の中で詫びる太一郎だった。