愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
「なんか、血まみれの男の人がいるって、通報があったんだって……」
「刺されたのかしら?」
「さあ……」
年配の女性がふたり、遠巻きに噂していた。付近の住民らしい。その男……新田の生死が知りたいのだが、おそらく聞いてもわからないだろう。
「茜、お前はこの辺で待ってろよ。俺が事情を聞いてくるから……」
「……置いて行かない?」
「行くかよ」
「警察に逮捕されても、一緒に来てくれる?」
「ああ、傍にいてやるから、馬鹿なことは考えんなよ。いいな?」
太一郎は近くのビルの非常階段に茜を座らせ、ひとりで店の前まで歩いて行く。
すると、ビルの入り口から担架に乗せられた男が出て来た。新田だ。
新田は頭に白い布を当てられ、それを自分で押さえていた。身体には薄手の毛布がかけられており、詳しい怪我の状態はわからないが、生きていることは間違いない。
自分の目で確認して、太一郎はホッと息を吐く。
このことを、早く茜に教えてやらなければ。そう考えて太一郎が踵を返したそのとき、背後から声が上がった。
「あ、あの男だ! ア、アイツが僕を殴ったんです!」
その叫び声に太一郎は振り返った。
そして彼の目に飛び込んできたのは……。上半身を起こし、真っ直ぐに太一郎を指差す新田の姿だった。
「刺されたのかしら?」
「さあ……」
年配の女性がふたり、遠巻きに噂していた。付近の住民らしい。その男……新田の生死が知りたいのだが、おそらく聞いてもわからないだろう。
「茜、お前はこの辺で待ってろよ。俺が事情を聞いてくるから……」
「……置いて行かない?」
「行くかよ」
「警察に逮捕されても、一緒に来てくれる?」
「ああ、傍にいてやるから、馬鹿なことは考えんなよ。いいな?」
太一郎は近くのビルの非常階段に茜を座らせ、ひとりで店の前まで歩いて行く。
すると、ビルの入り口から担架に乗せられた男が出て来た。新田だ。
新田は頭に白い布を当てられ、それを自分で押さえていた。身体には薄手の毛布がかけられており、詳しい怪我の状態はわからないが、生きていることは間違いない。
自分の目で確認して、太一郎はホッと息を吐く。
このことを、早く茜に教えてやらなければ。そう考えて太一郎が踵を返したそのとき、背後から声が上がった。
「あ、あの男だ! ア、アイツが僕を殴ったんです!」
その叫び声に太一郎は振り返った。
そして彼の目に飛び込んできたのは……。上半身を起こし、真っ直ぐに太一郎を指差す新田の姿だった。