愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
たしかに、任意とはいえ現在の太一郎の立場は微妙だ。
しかし宗の聞いた限りでは、現場検証さえ済めば、一両日中には事実が解明されるはずである。
次第に泣き崩れそうになる茜の肩を抱き、宗は彼女を慰めつつ、警察から引き離した。
「話は聞きました。ですが、本当に太一郎様は大丈夫ですから、ご安心を」
「でもっ! あの男は私のことも指差したのよ。だから太一郎は……」
不安に駆られ、ビルの陰から茜が覗き見たとき――何と太一郎が警察に連れて行かれる所だった。
茜は恐怖もそこそこに、店の前まで走って行く。
すると、救急車の中から新田は『あの娘も共犯だ!』と叫んだのだ。新田が生きていてよかったと思う反面、悔しさが湧き上がり、茜は言葉にならない。
そのとき太一郎が『警察には俺が行く。彼女は見てのとおり裸足で怪我をしてる。病院に連れて行くのが先だろう』そんなふうに言ってくれた。
「事情は全部自分が話すから……私は被害者だからって」
茜の言葉に、宗は感心を通り越して言葉もない。
先月、警察に囲まれたことで逃げ出し、そのせいで逮捕されることになった男と同一人物とは思えない腹の据わり具合だ。
この茜と恋人同士になり、そこまで変わったのだとすれば、やはり、卓巳の従弟と言うべきか。
だが茜の次の台詞に、宗の頭には再び疑問符の山が積み上がった。
「太一郎には奥さんがいるのっ! これ以上、迷惑はかけられない。お願い、宗さん。太一郎が早く出られるようにしてっ!」
しかし宗の聞いた限りでは、現場検証さえ済めば、一両日中には事実が解明されるはずである。
次第に泣き崩れそうになる茜の肩を抱き、宗は彼女を慰めつつ、警察から引き離した。
「話は聞きました。ですが、本当に太一郎様は大丈夫ですから、ご安心を」
「でもっ! あの男は私のことも指差したのよ。だから太一郎は……」
不安に駆られ、ビルの陰から茜が覗き見たとき――何と太一郎が警察に連れて行かれる所だった。
茜は恐怖もそこそこに、店の前まで走って行く。
すると、救急車の中から新田は『あの娘も共犯だ!』と叫んだのだ。新田が生きていてよかったと思う反面、悔しさが湧き上がり、茜は言葉にならない。
そのとき太一郎が『警察には俺が行く。彼女は見てのとおり裸足で怪我をしてる。病院に連れて行くのが先だろう』そんなふうに言ってくれた。
「事情は全部自分が話すから……私は被害者だからって」
茜の言葉に、宗は感心を通り越して言葉もない。
先月、警察に囲まれたことで逃げ出し、そのせいで逮捕されることになった男と同一人物とは思えない腹の据わり具合だ。
この茜と恋人同士になり、そこまで変わったのだとすれば、やはり、卓巳の従弟と言うべきか。
だが茜の次の台詞に、宗の頭には再び疑問符の山が積み上がった。
「太一郎には奥さんがいるのっ! これ以上、迷惑はかけられない。お願い、宗さん。太一郎が早く出られるようにしてっ!」