愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
(25)別れ道
「藤原太一郎さん。ご苦労様でした。もうお帰りになって結構ですよ」


そんなふうに言われたのは、任意同行を求められてから丸一日も経ってはいなかった。


さすがに警察相手に偽名は使えない。太一郎は小平署のときと同様に、本名の藤原を名乗った。

事情を説明すると言ったものの、太一郎には詳しい事情は何もわからないのだ。ただ、茜から聞いたとおりのことを答えた。


しかし、それは新田の供述とはかなりずれており……。太一郎は、長期戦になるなら宗に奈那子のことも頼まなければならない、と考え始めたときだった。


「お疲れ様でした」


目白署の玄関口で宗が迎えてくれる。

だが、茜の姿がないことに、太一郎は若干の不安を覚えた。


「ああ……悪い。なんか迷惑ばっかりかけて。それで、あの……あか……佐伯は?」

「佐伯さんはお母様が迎えに来られました。お母様の落ち込みが酷く……佐伯さんが傍についてご実家の方に戻られました」


宗から聞いた事情は、太一郎の想像を遥かに上回るものであった。


まず、警察は最初から新田を怪しんでいたという。

理由は簡単だ。


「義理の娘の身を案じる男が、股間をその娘に噛まれるわけがありませんからね」


宗は笑いを堪えながら話す。


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