愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
太一郎は前のめりになり、危うく倒れそうになる。


「おい、いい加減にしねぇか! このクソガキ!」

「聞いてんだよ。お前が伊勢崎太一郎なんだよなっ!」

「だったら何だよ。俺はお前らなんかに用はねぇんだよ」


太一郎が答えた瞬間、先ほど足をかけた少年がいきなり右足で蹴りを入れてきた。

とっさに避けたが、スニーカーの先が太一郎の腕を掠めた。


「お前をぶちのめして、骨の二、三本折ってやれってさ。俺らもバイトだからさ。勘弁してくれよな、おにーさん」


白石か、それともやはり清二が……考えをめぐらせた瞬間、少年らの背後に女の足が見えた。


太一郎は唇を噛み締め、唸るように呟く。


「やっぱりお前か……」


そこに立っていたのは郁美だった。


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