愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
(27)路地裏の攻防
「言っとくけど、これはあなたが悪いんだから。世話になった社長夫人に対して、失礼なことを言ったからよ。充分に反省してちょうだいね」
太一郎にそんな台詞をぶつけながら、郁美は内心、可笑しくて堪らなかった。
義理の息子で情夫の等に、金で暴れてくれる人間を見つけろと命令した直後、白石と名乗る男から電話がかかった。
――奈那子らしき女の亭主が名村産業で働いている。
そんな情報を白石が拾ったらしい。
白石は郁美に、『名前は明かせないが、家出した名家のお嬢様が悪い男に騙されている。両親は連れ戻したい意向だ』と伝える。情報には金を払う、その言葉に郁美は飛びついた。
だが、“藤原太一郎”の情報は黙っておいた。これは別に金になるかもしれない、そう考えたからだ。
案の定、白石のすぐあとに別の人間からコンタクトがあった。
名前は名乗らなかったので、よほどヤバイ筋なのかもしれない。だがその相手は、郁美が白石に話していない情報があると伝えると、情報料を上積みして来た。
おかげで小遣いはタップリ稼げたし、この少年たちを雇う金は等に出させたし、太一郎には仕返しができるし……。
郁美は笑いが止まらない。
「俺たちのことを、白石や泉沢に話したのもテメェだな」
「あら、なんのことかしら? 証拠があるの?」
「こんなガキども使って、いったいなんの真似だ」
「決まってるじゃない。あなたの腐った根性を叩き直してあげるのよ。悪党がいい子ちゃんぶっても無駄だって、ね」
顎を少ししゃくると、少年らはスポンサーである郁美の言いなりに太一郎を取り囲んだ。
(せっかくの仕返しですもの。特等席で見なきゃね)
郁美は真っ赤なロードスターにもたれかかり、煙草を一本取り出して、のんびりと火を吐けた。
太一郎にそんな台詞をぶつけながら、郁美は内心、可笑しくて堪らなかった。
義理の息子で情夫の等に、金で暴れてくれる人間を見つけろと命令した直後、白石と名乗る男から電話がかかった。
――奈那子らしき女の亭主が名村産業で働いている。
そんな情報を白石が拾ったらしい。
白石は郁美に、『名前は明かせないが、家出した名家のお嬢様が悪い男に騙されている。両親は連れ戻したい意向だ』と伝える。情報には金を払う、その言葉に郁美は飛びついた。
だが、“藤原太一郎”の情報は黙っておいた。これは別に金になるかもしれない、そう考えたからだ。
案の定、白石のすぐあとに別の人間からコンタクトがあった。
名前は名乗らなかったので、よほどヤバイ筋なのかもしれない。だがその相手は、郁美が白石に話していない情報があると伝えると、情報料を上積みして来た。
おかげで小遣いはタップリ稼げたし、この少年たちを雇う金は等に出させたし、太一郎には仕返しができるし……。
郁美は笑いが止まらない。
「俺たちのことを、白石や泉沢に話したのもテメェだな」
「あら、なんのことかしら? 証拠があるの?」
「こんなガキども使って、いったいなんの真似だ」
「決まってるじゃない。あなたの腐った根性を叩き直してあげるのよ。悪党がいい子ちゃんぶっても無駄だって、ね」
顎を少ししゃくると、少年らはスポンサーである郁美の言いなりに太一郎を取り囲んだ。
(せっかくの仕返しですもの。特等席で見なきゃね)
郁美は真っ赤なロードスターにもたれかかり、煙草を一本取り出して、のんびりと火を吐けた。