愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
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太一郎は、体格だけならボディガードにも負けてはいない。
だが、正直に言うと“見かけ倒し”の見本であった。
元々、器用でもなければ運動神経もない。その割に負けず嫌いな性格だけが邪魔をして、真面目にスポーツに励むこともなかった。
高校時代から酒を飲み、自堕落な生活を十年近くも送ってきた身体だ。事実、今年に入って初めて仕事に就いたときは散々だった。一日中立ちっ放しと言うだけで、筋肉痛でバテたくらいである。
半年かけて、ようやく人並に働けるようになったのだ。いや、今は人並以上に働いても平気というべきか。
しかし、喧嘩となると話は別である。
揉めごとはできる限り金で片を付けてきた。一方的に殴りつける喧嘩以外は知らない。
ひとり、ふたり、とかかってくる連中を避けるのが精いっぱいで、不意打ちでなければ相手を殴り倒すことなどできない。
この間の、白石が連れていたボディガードがいい例だろう。
あとは、卓巳と殴り合った記憶があるが……。
あのときの気力をここで振り絞れと言われても、突然出て来るものではない。
(こんなことしてる場合じゃねぇのに……)
太一郎の気持ちが一瞬奈那子に逸れた。
太一郎は、体格だけならボディガードにも負けてはいない。
だが、正直に言うと“見かけ倒し”の見本であった。
元々、器用でもなければ運動神経もない。その割に負けず嫌いな性格だけが邪魔をして、真面目にスポーツに励むこともなかった。
高校時代から酒を飲み、自堕落な生活を十年近くも送ってきた身体だ。事実、今年に入って初めて仕事に就いたときは散々だった。一日中立ちっ放しと言うだけで、筋肉痛でバテたくらいである。
半年かけて、ようやく人並に働けるようになったのだ。いや、今は人並以上に働いても平気というべきか。
しかし、喧嘩となると話は別である。
揉めごとはできる限り金で片を付けてきた。一方的に殴りつける喧嘩以外は知らない。
ひとり、ふたり、とかかってくる連中を避けるのが精いっぱいで、不意打ちでなければ相手を殴り倒すことなどできない。
この間の、白石が連れていたボディガードがいい例だろう。
あとは、卓巳と殴り合った記憶があるが……。
あのときの気力をここで振り絞れと言われても、突然出て来るものではない。
(こんなことしてる場合じゃねぇのに……)
太一郎の気持ちが一瞬奈那子に逸れた。