愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
(28)従兄弟
「宗はどこに行ったんだ!?」
今日の正午近く、藤原グループ本社ビル社長室内での会話である。卓巳は、配属されたばかりの新人秘書に宗の所在を尋ねた。
「はっ、はい! 急用で出社が遅れると、連絡があったみたいです」
「急用とはどんな用だ? いつ連絡があった? なぜ携帯にも出ないんだ?」
「……それは……私には」
新人とはいえ卓巳とそう歳は変わらない。これまで地方支社で重役秘書を務めて来た男だ。本社に呼ばれた以上、使えない人間であるはずがなかった。
しかし、ほとんどの人間が卓巳の前に立つなり、身を竦め口が回らなくなる。その態度が余計に社長を苛立たせ、冷たい視線を浴びる羽目になるのだが……。
無論、卓巳に悪意はない。
ただ無意識のうちに、辛辣な口調と厳しい視線を向けてしまうようだ。
(そのために宗が必要で、奴の引継ぎが重要なんじゃないか!)
「もういい。仕事に戻れ。ああ、宗から連絡があったら私に回せ」
「はいっ!」
新人秘書は最敬礼して部屋を出て行った。
宗の秘密主義はいつものことだ。
以前はそのほとんどが女絡みだったが、今回は違うらしい。
今日の正午近く、藤原グループ本社ビル社長室内での会話である。卓巳は、配属されたばかりの新人秘書に宗の所在を尋ねた。
「はっ、はい! 急用で出社が遅れると、連絡があったみたいです」
「急用とはどんな用だ? いつ連絡があった? なぜ携帯にも出ないんだ?」
「……それは……私には」
新人とはいえ卓巳とそう歳は変わらない。これまで地方支社で重役秘書を務めて来た男だ。本社に呼ばれた以上、使えない人間であるはずがなかった。
しかし、ほとんどの人間が卓巳の前に立つなり、身を竦め口が回らなくなる。その態度が余計に社長を苛立たせ、冷たい視線を浴びる羽目になるのだが……。
無論、卓巳に悪意はない。
ただ無意識のうちに、辛辣な口調と厳しい視線を向けてしまうようだ。
(そのために宗が必要で、奴の引継ぎが重要なんじゃないか!)
「もういい。仕事に戻れ。ああ、宗から連絡があったら私に回せ」
「はいっ!」
新人秘書は最敬礼して部屋を出て行った。
宗の秘密主義はいつものことだ。
以前はそのほとんどが女絡みだったが、今回は違うらしい。