愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
宗だけではない。ここ最近、万里子の様子もどこかおかしい。
昨日もベビー服やおもちゃ・マタニティ服を買い込んで来て、卓巳を驚かせたくらいだ。
可愛いものが目に付けばすぐに買って来る卓巳のせいで、増え過ぎて困ると怒られたのは今月のはじめだった。それもピンクが中心だったので、万里子から『せめて白にして』と言われて今は気をつけている。
無論、万里子の趣味もあるだろう。
だが、子供のおもちゃ箱になりそうなプラスティックケースに入れ、卓巳の目からサッと隠そうとする仕草がどうも気になる。
――万里子は男の子用を購入しているのだろうか?
仮にそうであっても、ひとりくらいは男の子も欲しいので将来役に立つではないか。たとえ、今回は無駄になったとしても……。
卓巳が意識を万里子から仕事に戻し、書類に目を落とした瞬間だった。
ドアがノックされ、先ほどの新人秘書が血相を変えて飛び込んで来る。
「あ、あの……社長……一階の受付に、随分慌てた様子だと」
「熊谷(くまがや)、慌てているのは君だ。来客か? そうでないなら警備員に対処させろ。危険人物なら警察に通報するんだ」
「あの、奥様が……社長の奥様が受付に。真っ青になっておられて……」
その言葉を聞いた瞬間、社長室に突風が起こった。
一瞬で、卓巳は部屋を飛び出したのである。
昨日もベビー服やおもちゃ・マタニティ服を買い込んで来て、卓巳を驚かせたくらいだ。
可愛いものが目に付けばすぐに買って来る卓巳のせいで、増え過ぎて困ると怒られたのは今月のはじめだった。それもピンクが中心だったので、万里子から『せめて白にして』と言われて今は気をつけている。
無論、万里子の趣味もあるだろう。
だが、子供のおもちゃ箱になりそうなプラスティックケースに入れ、卓巳の目からサッと隠そうとする仕草がどうも気になる。
――万里子は男の子用を購入しているのだろうか?
仮にそうであっても、ひとりくらいは男の子も欲しいので将来役に立つではないか。たとえ、今回は無駄になったとしても……。
卓巳が意識を万里子から仕事に戻し、書類に目を落とした瞬間だった。
ドアがノックされ、先ほどの新人秘書が血相を変えて飛び込んで来る。
「あ、あの……社長……一階の受付に、随分慌てた様子だと」
「熊谷(くまがや)、慌てているのは君だ。来客か? そうでないなら警備員に対処させろ。危険人物なら警察に通報するんだ」
「あの、奥様が……社長の奥様が受付に。真っ青になっておられて……」
その言葉を聞いた瞬間、社長室に突風が起こった。
一瞬で、卓巳は部屋を飛び出したのである。