愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
(29)運命の行方
真っ赤なロードスターはフル・オープンの状態だった。
郁美は車に乗り、エンジンをかけるなりルーフのスイッチを押そうとする。
しかし、その手を卓巳が掴んだ。
卓巳は身を乗り出し、もう片方の手でエンジンを切る。
「調べはついてる。随分、太一郎が世話になったらしいな」
「そ、そ、そうよ。あたしが……あたしが仕事だって……世話してやって。なのに、メスブタなんて言って……そうよ! あなたの従弟はあたしをこの車で襲ったのよっ!」
「テメェ、その前に自分が何をしたか……」
怒鳴り返そうとした太一郎を、卓巳は目で制した。
それを見て、太一郎は横を向き黙り込む。
卓巳に考えがあることは明らかだ。
「それはすまなかったな。では、その仕返しに、先ほどの少年たちを雇い、太一郎を襲わせたわけか?」
「そ、それは……さあ、知らないわ。あたしじゃないもの。たまたま見かけて……仕返しになるかもって思っただけよ」
郁美は視線を彷徨わせながら、そんな見え透いた言い訳を重ねる。
「君も先ほどの話を聞いていたと思うが、桐生代議士や泉沢大臣も絡んだ問題だ。それに、路地裏での一件が表沙汰になるのは、私にとっても非常にまずい……」
太一郎には卓巳のやろうとすることがわからなかった。
郁美は車に乗り、エンジンをかけるなりルーフのスイッチを押そうとする。
しかし、その手を卓巳が掴んだ。
卓巳は身を乗り出し、もう片方の手でエンジンを切る。
「調べはついてる。随分、太一郎が世話になったらしいな」
「そ、そ、そうよ。あたしが……あたしが仕事だって……世話してやって。なのに、メスブタなんて言って……そうよ! あなたの従弟はあたしをこの車で襲ったのよっ!」
「テメェ、その前に自分が何をしたか……」
怒鳴り返そうとした太一郎を、卓巳は目で制した。
それを見て、太一郎は横を向き黙り込む。
卓巳に考えがあることは明らかだ。
「それはすまなかったな。では、その仕返しに、先ほどの少年たちを雇い、太一郎を襲わせたわけか?」
「そ、それは……さあ、知らないわ。あたしじゃないもの。たまたま見かけて……仕返しになるかもって思っただけよ」
郁美は視線を彷徨わせながら、そんな見え透いた言い訳を重ねる。
「君も先ほどの話を聞いていたと思うが、桐生代議士や泉沢大臣も絡んだ問題だ。それに、路地裏での一件が表沙汰になるのは、私にとっても非常にまずい……」
太一郎には卓巳のやろうとすることがわからなかった。