愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
「沈黙が答えか? 太一郎、迷ってるならやめろ。あとで過ちと気づいたら、周囲を不幸にする。立ち止まるのも勇気だ」

「そうじゃ……ねぇよ」


奈那子は『一生信じる』と言ってくれた。

それに応えたいと思う気持ちも真実なのだ。


「俺は、奈那子と結婚したい」

「佐伯茜はいいのか?」


卓巳の口から茜の名が零れたのは不意打ちだった。


だが、この期に及んで驚くことは何もない。むしろ、目白署の一件を知っているなら、卓巳が宗から茜とのことを聞いていて当然だろう。


「茜とは偶然出会って、俺と関わったから妙なことに巻き込んじまって……」


言い訳を始めた太一郎の耳に、卓巳のため息が聞こえてくる。

太一郎はそれを振り払うように、声を荒げた。


「とにかく! 俺は奈那子と結婚する。たとえ認めてもらえなくても俺は」

「認めないとは言ってない。――いいだろう。お前に勝たせてやる」


卓巳は不敵な笑みを浮かべ、太一郎を見たのだった。


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