愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
「あなたのような経験の少ない女子大生を罠に嵌めて、それで楽しんでいるような下種な男よ。あなたは騙されてるのよ」
太一郎と付き合い始めた奈那子に、友人は口を揃えて言う。
「わたしは違うの。本当に助けて下さったのよ。時折、乱暴な口調にはなるけれど、本心ではないの。ご家庭で辛い思いをされてるから……」
心が潰れそうになるほどの過大な期待――その重圧の苦しさを奈那子は知っている。
かといって、重圧から解放されても決して楽にはなれない。自分の至らなさに苛まれ続けるのだ。
奈那子の目に太一郎は孤独に映った。
どれほど多くの友人に囲まれていても、いつもひとりで寂しそうにしている。自分なら、太一郎を癒して本来の彼に戻して上げられるかもしれない。
太一郎を庇い続ける奈那子の姿に、友人はひとりずつ離れて行った。
献身的に尽くす奈那子に、太一郎の要求は身体だけに止まらなくなる。「従兄に奪われて、小遣いすらままならない」と言い始め……。
自分名義の預金まで崩すようになった奈那子を、周囲の誰もが冷たく嗤(わら)っていた。
それでも信じると決めたのだ。
夢にまで見たヒーローが、マッチポンプを仕組んだ偽物であるはずがない。
父に逆らい、家を出て、どれほど苦しい思いをしたとしても……奈那子にとって太一郎は、この世界で唯ひとりの英雄だった。
太一郎と付き合い始めた奈那子に、友人は口を揃えて言う。
「わたしは違うの。本当に助けて下さったのよ。時折、乱暴な口調にはなるけれど、本心ではないの。ご家庭で辛い思いをされてるから……」
心が潰れそうになるほどの過大な期待――その重圧の苦しさを奈那子は知っている。
かといって、重圧から解放されても決して楽にはなれない。自分の至らなさに苛まれ続けるのだ。
奈那子の目に太一郎は孤独に映った。
どれほど多くの友人に囲まれていても、いつもひとりで寂しそうにしている。自分なら、太一郎を癒して本来の彼に戻して上げられるかもしれない。
太一郎を庇い続ける奈那子の姿に、友人はひとりずつ離れて行った。
献身的に尽くす奈那子に、太一郎の要求は身体だけに止まらなくなる。「従兄に奪われて、小遣いすらままならない」と言い始め……。
自分名義の預金まで崩すようになった奈那子を、周囲の誰もが冷たく嗤(わら)っていた。
それでも信じると決めたのだ。
夢にまで見たヒーローが、マッチポンプを仕組んだ偽物であるはずがない。
父に逆らい、家を出て、どれほど苦しい思いをしたとしても……奈那子にとって太一郎は、この世界で唯ひとりの英雄だった。