愛を教えて ―輪廻― （第一章 奈那子編）
～＊～＊～＊～


「と、とにかく。桐生先生のお宅に伺うぞ！　そいつは僕の子なんだ。僕と結婚できるようにしてもらう。先生ならできるはずだ。お前もそう言うんだ。僕と結婚したいって……でなきゃ、そのガキだけ取り上げるぞ！」


清二は苛立った様子で奈那子の手首を掴んだ。

その乱暴さが怖くなり、奈那子は清二の手を振り解く。


「離してください！　お祖父様の所には参ります。でも、乱暴な真似はなさらないでください」

「なんだとぉ……貴様、誰に向かって言ってるんだ？　お前は僕の妻になるんだ！　逆らうならただじゃ済まないぞっ！」


清二は手を振り上げた。

身を縮め、奈那子は必死でお腹を庇う。

その前に飛び出したのが悠里だった。彼女は小柄な奈那子と違い、振り下ろされた清二の手を思い切り払い落とした。


「妊婦に……しかも、自分の子供を妊娠してる女性になんてことするのっ！？　それじゃ、あの太一郎と変わらないじゃない！」

「う、うるさい！　逆らうならお前にも金を払わないぞ」

「いいわよ！　だったら週刊誌に持ち込んでやる！　奈那子さんを脅して連れ去って、暴力を振るったって――泉沢大臣の名前を出したら、どこも喜んで買ってくれるわ」


権力を笠に着ているだけで、本質的には口喧嘩すらできない男だ。強気の悠里に押され気味である。

しかし――。


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