愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
キスを中断させられ、苛立ちを覚えつつ太一郎が振り返ったとき――。
車はすでに、藤原邸のエントランスホールに到着していた。
卓巳からの連絡で、太一郎が戻ってくる、と万里子をはじめ全員が迎えに出ていたらしい。
だが、当の太一郎は、車が停まったことすら気づかず、キスをやめる気配もない。仕方なく、和田雪音が後部座席の窓をノックしたのだという。
雪音は万里子付きのメイドで、宗の恋人だ。
宗曰く『意地っ張りな所が堪らなく可愛らしい』というが、太一郎にはよくわからない。口調も表情もきつく、まともな笑顔も見たことがなかった。
おまけに、
『お帰りなさいませ、太一郎様。でも、続きは部屋でやってくれますか?』
赤面する万里子と違い、雪音は平然と言ってのけたのである。
「だから……いや、って言ったのに……」
腕の中の奈那子は涙ぐんでいる。
下半身に凝縮された熱が、一気に冷めて行く太一郎であった。
車はすでに、藤原邸のエントランスホールに到着していた。
卓巳からの連絡で、太一郎が戻ってくる、と万里子をはじめ全員が迎えに出ていたらしい。
だが、当の太一郎は、車が停まったことすら気づかず、キスをやめる気配もない。仕方なく、和田雪音が後部座席の窓をノックしたのだという。
雪音は万里子付きのメイドで、宗の恋人だ。
宗曰く『意地っ張りな所が堪らなく可愛らしい』というが、太一郎にはよくわからない。口調も表情もきつく、まともな笑顔も見たことがなかった。
おまけに、
『お帰りなさいませ、太一郎様。でも、続きは部屋でやってくれますか?』
赤面する万里子と違い、雪音は平然と言ってのけたのである。
「だから……いや、って言ったのに……」
腕の中の奈那子は涙ぐんでいる。
下半身に凝縮された熱が、一気に冷めて行く太一郎であった。