愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
“一番見込みのない孫”とは間違いなく自分のことだろう。
太一郎は膝の上に置いた手を、力一杯握り締めた。
「そうそう、去年の夏だったか。わしの孫に手を付けて、逃げ出しおった臆病者だ。いくら藤原と縁続きになれると言っても……あの男は要らん」
うつむきたくなる顔を、太一郎は必死で上げていた。チラッと横を見るが、卓巳は無表情だ。
桐生老はなんでもないことのように言いながら、その実、卓巳を威嚇しているのは明らかだった。
「さて……藤原の二代目。この男は誰かな?」
卓巳は口元に笑みを浮かべ、
「桐生先生も人が悪い。その“見込みのない臆病者”ですよ。今は、あなたの義理の孫だ」
そう答えると同時に、太一郎に――何か言え、と促す。
「藤原太一郎です。去年のことは、心からお詫び申し上げます。本当にすみませんでした!」
静かな桐生老と卓巳の語らいとは違い、太一郎はハッキリとした声で答えた。
いや、怒鳴った、と言うほうが正しい。
「それから、奈那子……さん、と入籍しました。自分にできる精一杯のことをして、幸せにしたいと思っています! どうか、認めてください! よろしくお願いします!」
太一郎は膝の上に置いた手を、力一杯握り締めた。
「そうそう、去年の夏だったか。わしの孫に手を付けて、逃げ出しおった臆病者だ。いくら藤原と縁続きになれると言っても……あの男は要らん」
うつむきたくなる顔を、太一郎は必死で上げていた。チラッと横を見るが、卓巳は無表情だ。
桐生老はなんでもないことのように言いながら、その実、卓巳を威嚇しているのは明らかだった。
「さて……藤原の二代目。この男は誰かな?」
卓巳は口元に笑みを浮かべ、
「桐生先生も人が悪い。その“見込みのない臆病者”ですよ。今は、あなたの義理の孫だ」
そう答えると同時に、太一郎に――何か言え、と促す。
「藤原太一郎です。去年のことは、心からお詫び申し上げます。本当にすみませんでした!」
静かな桐生老と卓巳の語らいとは違い、太一郎はハッキリとした声で答えた。
いや、怒鳴った、と言うほうが正しい。
「それから、奈那子……さん、と入籍しました。自分にできる精一杯のことをして、幸せにしたいと思っています! どうか、認めてください! よろしくお願いします!」