愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
~*~*~*~*~
「太一郎さん、素敵です」
アルマーニのスーツ姿のまま、太一郎は藤原邸に戻った。
万事上手くいったと聞き、奈那子は満面の笑顔だ。しかも、これまで見たことのない太一郎の姿に、頬を染めうっとりとみつめている。
さらに奈那子は「あのおじい様を説得するなんて!」と手放しで太一郎を褒め称えた。
半分以上、卓巳のおかげなのだが……。
奈那子にそう言っても、謙遜だと思い込んでいるようだ。
最後に、卓巳が桐生老を黙らせた台詞だが……。
『ああ、実はあの妖怪爺さんも婿養子なんだ。だが外に愛人を作って子供まで産ませている。認知してるのが四人。そのうち娘が三人……』
それでは計算が合わない。
卓巳は確かふたりの息子と言ったはずだ。太一郎がそこを尋ねると、なんと、妻の妹に手を出し息子を産ませているというのだ。もちろん認知はしていない。妻は三年ほど前に亡くなっており、煩く言う人間は身内にはいないが……。
『問題は、その息子が政界入りしていることだ。バレたらスキャンダルになる。甥っ子の名目で、奴もかなりプッシュしているからな』
そんな隠し玉があるなら最初から使ってくれ、と太一郎は思う。
だが、
『どんな切り札も使うタイミングを誤ると価値を失う。奴がお前を認め始めたから、勝負に出たんだ。それと十割勝とうとするな、七割であとは引け。欲張るとゼロになるぞ』
卓巳に諭され、あらためて従兄の凄さを実感する太一郎であった。
「太一郎さん、素敵です」
アルマーニのスーツ姿のまま、太一郎は藤原邸に戻った。
万事上手くいったと聞き、奈那子は満面の笑顔だ。しかも、これまで見たことのない太一郎の姿に、頬を染めうっとりとみつめている。
さらに奈那子は「あのおじい様を説得するなんて!」と手放しで太一郎を褒め称えた。
半分以上、卓巳のおかげなのだが……。
奈那子にそう言っても、謙遜だと思い込んでいるようだ。
最後に、卓巳が桐生老を黙らせた台詞だが……。
『ああ、実はあの妖怪爺さんも婿養子なんだ。だが外に愛人を作って子供まで産ませている。認知してるのが四人。そのうち娘が三人……』
それでは計算が合わない。
卓巳は確かふたりの息子と言ったはずだ。太一郎がそこを尋ねると、なんと、妻の妹に手を出し息子を産ませているというのだ。もちろん認知はしていない。妻は三年ほど前に亡くなっており、煩く言う人間は身内にはいないが……。
『問題は、その息子が政界入りしていることだ。バレたらスキャンダルになる。甥っ子の名目で、奴もかなりプッシュしているからな』
そんな隠し玉があるなら最初から使ってくれ、と太一郎は思う。
だが、
『どんな切り札も使うタイミングを誤ると価値を失う。奴がお前を認め始めたから、勝負に出たんだ。それと十割勝とうとするな、七割であとは引け。欲張るとゼロになるぞ』
卓巳に諭され、あらためて従兄の凄さを実感する太一郎であった。