愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
「それと、今日、皐月おばあ様にお会いいたしました」
「ああ、悪い。俺も一緒に行くつもりが……心細くなかったか?」
「いいえ。優しいお言葉をかけていただいて……」
そこで奈那子の表情が曇った。
そのまま、少しトーンの低い声で話し続ける。
「でも、子供のことをちゃんと話さなくてよかったんでしょうか? おばあ様は太一郎さんの赤ちゃんだと思っていらして」
――奈那子のお腹には太一郎の子供がいる。
誰が言ったわけでもないのだが、皐月はそう思い込んでいた。昨年の、奈那子との件を知っているからこその勘違いだろう。
最初にそれを聞いたとき、太一郎はすぐに本当のことを言おうとした。
そこを卓巳に止められたのだった。
皐月は心臓を患っている。昨年、余命一年と診断されたほど重篤(じゅうとく)だ。当時の太一郎はそのことを知らず……。
今年の一月、皐月が心筋梗塞で倒れたとき、卓巳から聞いたのだった。
皐月は意識を取り戻し、こうして自宅で療養できるまで回復した。
だが、油断は禁物。すでに医者の告げたタイムリミットは過ぎており、今度大きな発作があったら……そう言われている。
「ああ、悪い。俺も一緒に行くつもりが……心細くなかったか?」
「いいえ。優しいお言葉をかけていただいて……」
そこで奈那子の表情が曇った。
そのまま、少しトーンの低い声で話し続ける。
「でも、子供のことをちゃんと話さなくてよかったんでしょうか? おばあ様は太一郎さんの赤ちゃんだと思っていらして」
――奈那子のお腹には太一郎の子供がいる。
誰が言ったわけでもないのだが、皐月はそう思い込んでいた。昨年の、奈那子との件を知っているからこその勘違いだろう。
最初にそれを聞いたとき、太一郎はすぐに本当のことを言おうとした。
そこを卓巳に止められたのだった。
皐月は心臓を患っている。昨年、余命一年と診断されたほど重篤(じゅうとく)だ。当時の太一郎はそのことを知らず……。
今年の一月、皐月が心筋梗塞で倒れたとき、卓巳から聞いたのだった。
皐月は意識を取り戻し、こうして自宅で療養できるまで回復した。
だが、油断は禁物。すでに医者の告げたタイムリミットは過ぎており、今度大きな発作があったら……そう言われている。