愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
「どんなふうにって……何をかしら?」
「あの……ですから……お腹に赤ちゃんがいて、夫婦生活……とか」
これまでひとつの病院に通院することもできず、マタニティ教室に通うこともなかった。奈那子には、妊娠中の不安を相談できる友達がひとりもいない。
いざというときに頼れるはずの母親は、生きていても“いない”と同じだ。
奈那子は真っ赤になりつつ、それでも真剣なまなざしを万里子に向ける。
一方、万里子も赤面しながら……これも性格だろうか、真面目に答え始めた。
「そ、そうねぇ。五ヶ月めくらいに、安定期に入ったからお医者様に大丈夫って言われて……でも、週に一回程度だったと思うわ。妊娠後期に入ってからは……ちょっと、ね。八ヶ月めだったかしら、挿入は浅めに、中で射精はしないことって言われたら……卓巳さん神経質だから」
それは奈那子も言われたことだった。
なんでも、精液には子宮を収縮させる成分が含まれているという。だが、妊娠の経過そのものに問題がなければ、影響はないらしい。ただ、何かの要素が重なれば早産を引き起こしかねないのも事実だった。
「ちょっと控え目に――してくれたらいいだけなんだけど。男性には難しいのかしら。太一郎さんはなんて言ってるの?」
万里子の問いに奈那子は正直に答えた。
たまに奈那子を抱きたそうにするのだが、結局、何もしないままに終わるのだ、と。
「時々、思うんです。本当にこの子を産んでいいのかどうか。太一郎さんは、一年前に中絶した子供の代わりと思っているみたいで……。こんなことなら、あのときに家を出て、太一郎さんの子供を産んでおけばよかった。そうしたら……」
「あの……ですから……お腹に赤ちゃんがいて、夫婦生活……とか」
これまでひとつの病院に通院することもできず、マタニティ教室に通うこともなかった。奈那子には、妊娠中の不安を相談できる友達がひとりもいない。
いざというときに頼れるはずの母親は、生きていても“いない”と同じだ。
奈那子は真っ赤になりつつ、それでも真剣なまなざしを万里子に向ける。
一方、万里子も赤面しながら……これも性格だろうか、真面目に答え始めた。
「そ、そうねぇ。五ヶ月めくらいに、安定期に入ったからお医者様に大丈夫って言われて……でも、週に一回程度だったと思うわ。妊娠後期に入ってからは……ちょっと、ね。八ヶ月めだったかしら、挿入は浅めに、中で射精はしないことって言われたら……卓巳さん神経質だから」
それは奈那子も言われたことだった。
なんでも、精液には子宮を収縮させる成分が含まれているという。だが、妊娠の経過そのものに問題がなければ、影響はないらしい。ただ、何かの要素が重なれば早産を引き起こしかねないのも事実だった。
「ちょっと控え目に――してくれたらいいだけなんだけど。男性には難しいのかしら。太一郎さんはなんて言ってるの?」
万里子の問いに奈那子は正直に答えた。
たまに奈那子を抱きたそうにするのだが、結局、何もしないままに終わるのだ、と。
「時々、思うんです。本当にこの子を産んでいいのかどうか。太一郎さんは、一年前に中絶した子供の代わりと思っているみたいで……。こんなことなら、あのときに家を出て、太一郎さんの子供を産んでおけばよかった。そうしたら……」