愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
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卓巳がその連絡を受けたのは会議中であった。
前日にとんぼ返りした北海道での案件について、報告を聞いていたときに、秘書の中澤朝美が病院からの電話を告げた。
(やはり、病院を離れるべきではなかった!)
瞬時に、万里子か息子に何かあったのだと思い、卓巳は後悔した。
しかし、電話の相手が当の万里子だと知り、少しホッとする。
ところが……半ばパニックの万里子から聞き出した言葉に、卓巳は戦慄を覚えた。
三十分後、病院の入り口で卓巳を出迎えたのは雪音だった。彼女を万里子の元に戻らせ、卓巳はひとりで手術室に向かう。
手術室――分娩室でないことが最悪の事態を意味する。
忙しなく動き回る医療関係者の中にあって、太一郎は廊下のベンチに放心状態で座っていた。
その姿は……まるで人を殺して逃亡中の犯人さながら、血塗れだった。
「太一郎、桐生老はすぐに来るそうだ。母親は、マスコミを避けて海外にいる。連絡はついたが……」
葬儀なら予定を繰り上げて戻るけど……。
そんな言葉を、卓巳はとても太一郎に伝えることはできなかった。
卓巳がその連絡を受けたのは会議中であった。
前日にとんぼ返りした北海道での案件について、報告を聞いていたときに、秘書の中澤朝美が病院からの電話を告げた。
(やはり、病院を離れるべきではなかった!)
瞬時に、万里子か息子に何かあったのだと思い、卓巳は後悔した。
しかし、電話の相手が当の万里子だと知り、少しホッとする。
ところが……半ばパニックの万里子から聞き出した言葉に、卓巳は戦慄を覚えた。
三十分後、病院の入り口で卓巳を出迎えたのは雪音だった。彼女を万里子の元に戻らせ、卓巳はひとりで手術室に向かう。
手術室――分娩室でないことが最悪の事態を意味する。
忙しなく動き回る医療関係者の中にあって、太一郎は廊下のベンチに放心状態で座っていた。
その姿は……まるで人を殺して逃亡中の犯人さながら、血塗れだった。
「太一郎、桐生老はすぐに来るそうだ。母親は、マスコミを避けて海外にいる。連絡はついたが……」
葬儀なら予定を繰り上げて戻るけど……。
そんな言葉を、卓巳はとても太一郎に伝えることはできなかった。