愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
初めは聞き違いかと思うほど、あまりに微かで……。
ふたりはそのままの姿勢で息を止め、聴覚に全神経を集中させる。
卓巳は心の中で手を合わせ、滅多に祈ることのない神に二日連続で祈りを捧げた。
約一分、男たちの緊張の糸が切れそうなほど張り詰めた、そのとき――。
そこに確かな命が誕生したのだ。
人々の鼓膜を震わせ、産声が響き渡ったのである。
~*~*~*~*~
「産まれた? 本当に……無事に産まれたんですね?」
万里子は病室前の血だまりを見たとき、倒れそうなほどショックを覚えた。
医者が駆けつけ、奈那子を運んで行く所だったのだが……。彼女自身の母親の例もある。万里子はすぐさま卓巳に連絡を取ったのだった。
「ああ、大丈夫だ。太一郎なら絶対に息子だと思ったんだが……。まあ、娘だとしても、母親に似れば美人になるだろう」
卓巳は少し機嫌悪そうに、それでいて憮然としている。
その理由が、太一郎に娘が産まれたことであるならいいのだが……。
ふたりはそのままの姿勢で息を止め、聴覚に全神経を集中させる。
卓巳は心の中で手を合わせ、滅多に祈ることのない神に二日連続で祈りを捧げた。
約一分、男たちの緊張の糸が切れそうなほど張り詰めた、そのとき――。
そこに確かな命が誕生したのだ。
人々の鼓膜を震わせ、産声が響き渡ったのである。
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「産まれた? 本当に……無事に産まれたんですね?」
万里子は病室前の血だまりを見たとき、倒れそうなほどショックを覚えた。
医者が駆けつけ、奈那子を運んで行く所だったのだが……。彼女自身の母親の例もある。万里子はすぐさま卓巳に連絡を取ったのだった。
「ああ、大丈夫だ。太一郎なら絶対に息子だと思ったんだが……。まあ、娘だとしても、母親に似れば美人になるだろう」
卓巳は少し機嫌悪そうに、それでいて憮然としている。
その理由が、太一郎に娘が産まれたことであるならいいのだが……。