愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
「子供の名前だけど……うちのばあさんから一字もらって“美月(みつき)”ってどうかな? 藤原家の曾孫だし、名前もらったって言ったら、喜んでくれると思うんだ」

「太一郎……さん?」

「俺には姉妹もいないから……女の子のことはよくわかんねぇ。それに、本当にちっこいんだぜ。触ったら壊しそうだし……俺には母乳なんてやれないし……」


笑っているつもりが……

太一郎の開いた瞳から、ハラハラと涙が流れ落ちる。

それは止め処なく溢れ出て、彼女の手を濡らしていく。


「頼む。頼むから、俺たちのために……諦めてくれよ。三人で生きようぜ。俺はお前の親父とは違う。お前だって、お袋さんとは違うだろ? 俺と……美月のために」


奈那子の頬がふわっと綻び、こめかみに一筋の涙が伝った。


彼女はゆっくりとうなずき、そのまま静かに目を閉じた――



――刹那。



容態の急変を告げる警告音がICUに鳴り響いた。


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