愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
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太一郎は美月を抱き、白く長い廊下を歩いていた。
鉄製の扉があり、開くと中庭に出る。
その瞬間、春一番が少し伸びた太一郎の髪をふわっと撫でた。ひと月前の身を切るような木枯らしが嘘のようだ。
冬の次は必ず春が来る――ただそれだけのことが、太一郎の胸をじんわりと温かくする。
中庭には細長い赤いカーペットが敷かれていた。
左右に白を基調としたパステルカラーの花が飾られ、カーペットの終点にあるのは祭壇だ。
「遅かったな」
太一郎に声をかけたのは卓巳だ。
黒のディレクターズスーツを着て、ウェストコートとタイはシルバーグレイ。何を着せても嫌になるほど絵になる男だ。
「美月は家から着せてきたんだけど。俺は来るなりコレだよ。なあ、こんなに派手にしていいのか? 仮にも病院だろ?」
「別にドンチャン騒ぎをやろうってわけじゃない。入院患者も嬉しそうに窓から見てる」
卓巳が指差した先には大勢の“見物客”がいた。
「俺は別に見世物になりたいわけじゃ」
「お前の希望は二の次だ。今日は頑張った花嫁のために、願いを叶えてやる日だろう?」
そう言って卓巳は太一郎の背後に視線を移す。
そこには――車椅子に乗ったウェディングドレス姿の奈那子がいた。
太一郎は美月を抱き、白く長い廊下を歩いていた。
鉄製の扉があり、開くと中庭に出る。
その瞬間、春一番が少し伸びた太一郎の髪をふわっと撫でた。ひと月前の身を切るような木枯らしが嘘のようだ。
冬の次は必ず春が来る――ただそれだけのことが、太一郎の胸をじんわりと温かくする。
中庭には細長い赤いカーペットが敷かれていた。
左右に白を基調としたパステルカラーの花が飾られ、カーペットの終点にあるのは祭壇だ。
「遅かったな」
太一郎に声をかけたのは卓巳だ。
黒のディレクターズスーツを着て、ウェストコートとタイはシルバーグレイ。何を着せても嫌になるほど絵になる男だ。
「美月は家から着せてきたんだけど。俺は来るなりコレだよ。なあ、こんなに派手にしていいのか? 仮にも病院だろ?」
「別にドンチャン騒ぎをやろうってわけじゃない。入院患者も嬉しそうに窓から見てる」
卓巳が指差した先には大勢の“見物客”がいた。
「俺は別に見世物になりたいわけじゃ」
「お前の希望は二の次だ。今日は頑張った花嫁のために、願いを叶えてやる日だろう?」
そう言って卓巳は太一郎の背後に視線を移す。
そこには――車椅子に乗ったウェディングドレス姿の奈那子がいた。