愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
彼は奈那子の存在を知らぬまま、風の噂では十年ほど前に結婚したらしい。
源次から、自分を桐生家から追い出せば、相手の男を調べ上げて破滅に追い込む、と言われ、美代子は、『心当たりは複数で誰だかわからない』と答えざるを得なかった。
挙式直前、美代子は花嫁姿の娘の手を取ると……。
「若いけれど、誠実な方でした。穏やかで、温かくて、あなたは……本当にそっくりだわ」
美代子は最後まで“愛”という言葉は使わなかった。それが彼女なりの誠意なのか、それとも愛情なのか、鈍い太一郎にはわかるはずもない。
「じゃあ美月が太一郎さんに似たら……照れ屋さんでちょっと不器用で、でも責任感の強い優しい子になりますね」
奈那子の言葉に太一郎は目が熱くなる。
「そ、そんな……俺は……俺なんかに似たら……」
「最悪だろう」
絶妙のタイミングで突っ込む卓巳に、結婚間近の雪音が涙ぐみながらフォローする。
「そんなことありませんわ、旦那様! 見た目が母親似でしたら……性格は太一郎様に似ても」
「ゆ、雪音さん、それはちょっと」
万里子が止めに入るものの、みんなで勝手なことを言っている。
源次から、自分を桐生家から追い出せば、相手の男を調べ上げて破滅に追い込む、と言われ、美代子は、『心当たりは複数で誰だかわからない』と答えざるを得なかった。
挙式直前、美代子は花嫁姿の娘の手を取ると……。
「若いけれど、誠実な方でした。穏やかで、温かくて、あなたは……本当にそっくりだわ」
美代子は最後まで“愛”という言葉は使わなかった。それが彼女なりの誠意なのか、それとも愛情なのか、鈍い太一郎にはわかるはずもない。
「じゃあ美月が太一郎さんに似たら……照れ屋さんでちょっと不器用で、でも責任感の強い優しい子になりますね」
奈那子の言葉に太一郎は目が熱くなる。
「そ、そんな……俺は……俺なんかに似たら……」
「最悪だろう」
絶妙のタイミングで突っ込む卓巳に、結婚間近の雪音が涙ぐみながらフォローする。
「そんなことありませんわ、旦那様! 見た目が母親似でしたら……性格は太一郎様に似ても」
「ゆ、雪音さん、それはちょっと」
万里子が止めに入るものの、みんなで勝手なことを言っている。