愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
ここはW大学の構内だ。茶道サークルからの注文で、茜は和菓子を配達してきた。
そして、W大は太一郎が通っていた大学でもあった。
卒業したはずだが……あの男のこと、留年しているかもしれない。実際二度も留年しており、三度目がないとは言いきれなかった。
「女子トイレのゴミも纏めてお願いね」
しかし、周りにいるのは清掃員だけで学生の姿は無い。
キョロキョロしていると、ゴンッと何かに突き当たった。茜は、清掃員の女性がトイレから持ち出したゴミ箱を倒してしまい、周囲に手を拭いたペーパーが散らばってしまう。
どうしよう、とウロウロしていると、男子トイレのゴミを運んでいた他の清掃員が駆け寄って来た。
「すみません……私」
「いえ、邪魔なところに置いたままですみませんでした。すぐに片付けますから」
ブルーの作業着を着た大柄な男性は、顔が隠れるほど目深にキャップを被っている。
「あの、手伝います」
「本当に大丈夫ですか……ら……」
一瞬、顔を上げた男性が息を飲む音が聞こえた。
だがそれは……
「た、た、たいちろうっ! なっ何やってんのっ!?」
茜の叫び声にかき消されたのであった。
そして、W大は太一郎が通っていた大学でもあった。
卒業したはずだが……あの男のこと、留年しているかもしれない。実際二度も留年しており、三度目がないとは言いきれなかった。
「女子トイレのゴミも纏めてお願いね」
しかし、周りにいるのは清掃員だけで学生の姿は無い。
キョロキョロしていると、ゴンッと何かに突き当たった。茜は、清掃員の女性がトイレから持ち出したゴミ箱を倒してしまい、周囲に手を拭いたペーパーが散らばってしまう。
どうしよう、とウロウロしていると、男子トイレのゴミを運んでいた他の清掃員が駆け寄って来た。
「すみません……私」
「いえ、邪魔なところに置いたままですみませんでした。すぐに片付けますから」
ブルーの作業着を着た大柄な男性は、顔が隠れるほど目深にキャップを被っている。
「あの、手伝います」
「本当に大丈夫ですか……ら……」
一瞬、顔を上げた男性が息を飲む音が聞こえた。
だがそれは……
「た、た、たいちろうっ! なっ何やってんのっ!?」
茜の叫び声にかき消されたのであった。