愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
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「あ、またコンビニおにぎり一個だ」
小窓から顔を押し込み、中を覗き込んでいるのは……見なくてもわかる、佐伯茜だ。
再会してから二週間、なぜか太一郎の周囲を徘徊している。
「お前な……。店の手伝いはどうしたんだよ。弟妹の面倒はみなくていいのか?」
茜は顔を引っ込めると、ドアの方から管理人室に入って来た。
大きめのTシャツにショートパンツ、小柄で幼さの残る顔だが、ボディラインは一人前の女だ。生足にサンダルを履き、小麦色の太腿を見せ付けられるのは……今の太一郎にはちょっとした拷問である。
「うっさいなぁ。午前中手伝ったからいいの! 下も中学生だもん、最近じゃ部活だなんだって家にいないよ」
「また、勝手に入って来るし……」
「ちょっと太一郎! ここを紹介してあげたのは、私だってこと忘れてない?」
このビルの一階に和菓子屋『さえき』があり、六階が茜一家の住居だった。
随分昔は佐伯家が土地も所有しており、ここに店と自宅があったという。
しかし、営業不振や代替りが続き相続税などの問題も生じて、茜の父親が藤原系列の不動産業者に売却した。
今は六階建てのビルの建物だけを所有していた。その所有権を担保にした借入の返済が滞り、それがきっかけで茜が藤原邸に勤めることになったのだが……。
“伊勢崎”は本名ではないので証明書が何も提示できない。
怪しい仕事は幾つもあるが、それでは藤原の名前が知られたときに、卓巳らに迷惑をかけるだろう。宗にばかり頼ることもできない。
『夜……どっかで働かしてくれねぇかな』
太一郎が漏らしたそんなひと言を聞き、茜はビルの管理室に話してくれたのだった。
「あ、またコンビニおにぎり一個だ」
小窓から顔を押し込み、中を覗き込んでいるのは……見なくてもわかる、佐伯茜だ。
再会してから二週間、なぜか太一郎の周囲を徘徊している。
「お前な……。店の手伝いはどうしたんだよ。弟妹の面倒はみなくていいのか?」
茜は顔を引っ込めると、ドアの方から管理人室に入って来た。
大きめのTシャツにショートパンツ、小柄で幼さの残る顔だが、ボディラインは一人前の女だ。生足にサンダルを履き、小麦色の太腿を見せ付けられるのは……今の太一郎にはちょっとした拷問である。
「うっさいなぁ。午前中手伝ったからいいの! 下も中学生だもん、最近じゃ部活だなんだって家にいないよ」
「また、勝手に入って来るし……」
「ちょっと太一郎! ここを紹介してあげたのは、私だってこと忘れてない?」
このビルの一階に和菓子屋『さえき』があり、六階が茜一家の住居だった。
随分昔は佐伯家が土地も所有しており、ここに店と自宅があったという。
しかし、営業不振や代替りが続き相続税などの問題も生じて、茜の父親が藤原系列の不動産業者に売却した。
今は六階建てのビルの建物だけを所有していた。その所有権を担保にした借入の返済が滞り、それがきっかけで茜が藤原邸に勤めることになったのだが……。
“伊勢崎”は本名ではないので証明書が何も提示できない。
怪しい仕事は幾つもあるが、それでは藤原の名前が知られたときに、卓巳らに迷惑をかけるだろう。宗にばかり頼ることもできない。
『夜……どっかで働かしてくれねぇかな』
太一郎が漏らしたそんなひと言を聞き、茜はビルの管理室に話してくれたのだった。