愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
ひとりに存在を知られたら、あとは瞬く間に知れ渡った。
北脇の他にも、暴君・太一郎の下僕にされた後輩たちが、嬉々として仕事中の彼を取り囲む。
「藤原から追い出されたってホントだったんだぁ」
「おもしれぇ~。あの藤原先輩が便所掃除してるぜ」
「なさけねぇな。俺だった死んでも嫌だね」
彼らは口々に太一郎を嘲笑った。
太一郎はそんな蔑みの視線に耐えつつ、懸命に仕事を続ける。逃げるという選択肢は、今の彼には許されていない。
「……掃除中なんだ。出て行ってくれねぇか」
ボソッと太一郎が口にしたとき、北脇は大声で答えた。
「何、偉そうに命令してんだよ! お願いします、じゃねぇのか? 掃除のおっさん」
騒ぎは少しでも小さく済ませたい。会社や大学側に、問題が起きていると知られては困るのだ。
北脇に言われるまま、太一郎はもう一度頭を下げた。
「掃除が終わるまで、外に出ていてください。……お願いします」
太一郎に向かって揶揄が飛び交う中、北脇はトイレの隅に積んであったトイレットペーパーを片っ端から床に転がした。
白いロール状の塊は、縦横無尽にコロコロと転がる。
水に濡れ、床に張り付いて行くのを、太一郎は黙って見ているしかない。
「ああ、わりぃな。落としちまった。片付けといてくれよ。掃除のおっさん」
北脇を筆頭に、集まった六人ほどが一斉に笑った。
北脇の他にも、暴君・太一郎の下僕にされた後輩たちが、嬉々として仕事中の彼を取り囲む。
「藤原から追い出されたってホントだったんだぁ」
「おもしれぇ~。あの藤原先輩が便所掃除してるぜ」
「なさけねぇな。俺だった死んでも嫌だね」
彼らは口々に太一郎を嘲笑った。
太一郎はそんな蔑みの視線に耐えつつ、懸命に仕事を続ける。逃げるという選択肢は、今の彼には許されていない。
「……掃除中なんだ。出て行ってくれねぇか」
ボソッと太一郎が口にしたとき、北脇は大声で答えた。
「何、偉そうに命令してんだよ! お願いします、じゃねぇのか? 掃除のおっさん」
騒ぎは少しでも小さく済ませたい。会社や大学側に、問題が起きていると知られては困るのだ。
北脇に言われるまま、太一郎はもう一度頭を下げた。
「掃除が終わるまで、外に出ていてください。……お願いします」
太一郎に向かって揶揄が飛び交う中、北脇はトイレの隅に積んであったトイレットペーパーを片っ端から床に転がした。
白いロール状の塊は、縦横無尽にコロコロと転がる。
水に濡れ、床に張り付いて行くのを、太一郎は黙って見ているしかない。
「ああ、わりぃな。落としちまった。片付けといてくれよ。掃除のおっさん」
北脇を筆頭に、集まった六人ほどが一斉に笑った。