愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
(10)因果は巡る
「『休み中で使用者も少ないはずなのに男子トイレが汚い』と大学の事務局に通報があるらしい。君が担当になってからだよ。もっと、真面目にやってくれないと」
太一郎は直属の上司に呼び出され叱責を受けた。だが、「申し訳ありませんでした」と頭を下げることしかできない。
あれから毎日、北脇たちは太一郎の邪魔をしにやって来る。
そして、茜は太一郎の前に現れなくなった。
「ほらほら、掃除のおっさん。ここも汚れてるぜ」
夏休みで人が少ないのをいいことに、彼らはやりたい放題だった。
おまけに事務局からは『トイレットペーパーの減りが早い。持ち帰っているのではないか』そんな疑いまでかけられ……。
茜にあんなことを言った以上、夜間警備員の仕事は辞めようかとも思った。
だがこの調子では、いつ清掃員をクビになるかわからない。そうなれば、たちまち生活に困るのはわかり切っている。
今朝も奈那子がパートに行くと言いだした。疲労の色が濃い太一郎を見て気遣ったのだ。
奈那子をこんな状況に追いやったのも、北脇らの無法な行動も、元はと言えばすべての原因は太一郎にあった。
(助けがないのも“因果応報”か……。笑えねぇな)
男の意地とプライドじゃ、女ひとり食わせることもできない。
太一郎は恥を忍んで警備員の仕事を続けていたのだった。
そんな太一郎は、さらに笑えない事態に陥る。
太一郎は直属の上司に呼び出され叱責を受けた。だが、「申し訳ありませんでした」と頭を下げることしかできない。
あれから毎日、北脇たちは太一郎の邪魔をしにやって来る。
そして、茜は太一郎の前に現れなくなった。
「ほらほら、掃除のおっさん。ここも汚れてるぜ」
夏休みで人が少ないのをいいことに、彼らはやりたい放題だった。
おまけに事務局からは『トイレットペーパーの減りが早い。持ち帰っているのではないか』そんな疑いまでかけられ……。
茜にあんなことを言った以上、夜間警備員の仕事は辞めようかとも思った。
だがこの調子では、いつ清掃員をクビになるかわからない。そうなれば、たちまち生活に困るのはわかり切っている。
今朝も奈那子がパートに行くと言いだした。疲労の色が濃い太一郎を見て気遣ったのだ。
奈那子をこんな状況に追いやったのも、北脇らの無法な行動も、元はと言えばすべての原因は太一郎にあった。
(助けがないのも“因果応報”か……。笑えねぇな)
男の意地とプライドじゃ、女ひとり食わせることもできない。
太一郎は恥を忍んで警備員の仕事を続けていたのだった。
そんな太一郎は、さらに笑えない事態に陥る。