愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
こんな告白は生まれて初めてだ。

太一郎は胸が甘く痺れる感覚に呼吸も忘れる。


「なあ、佐伯」

「茜でいいってば」

「佐伯、放してくんねぇか。俺、家で女が待ってるから」

「……嘘っ!」


――彼女がいたら、コンビニおにぎりなんて食べてないよね。


以前、茜が呟いた言葉だ。

そのときは、太一郎は何も答えなかった。……答えたくなかったのだ、あのときは。


「嘘じゃねぇ。なんのために昼も夜も働いてると思う? 十一月に子供が産まれんだよ。だから」

「嘘だよ……だって、太一郎がそんなにモテるわけないもんっ!」

「いや、だから……」


そのとき、太一郎の内ポケットで携帯が震えた。


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