愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
奈那子は身体を起こし、太一郎の方に身を乗り出して訴えた。
折れそうに細い指を彼の手に重ね……涙が頬を伝い落ちる。
「わかって……いるんです。太一郎さまはわたしに同情して下さってるだけだ、って。ご自身もこんなにご苦労なさってるのに……。わたしさえ子供を諦め実家に戻れば、多少のお金は都合して」
「やめろっ! 同情じゃないって言ったろ? なんで、そんな」
「太一郎さまに好きな女性ができたときは、わたしは家を出ますから。もちろん、子供さえ産まれたらすぐに。このお金もいつか必ず……」
「それ以上言うな!」
無意識だろう、奈那子は「太一郎さま」に戻っていた。
太一郎はそんな奈那子のお腹を庇うように、そっと抱き寄せる。
妙なものだが……再会してから四ヶ月も一緒に暮らしながら、彼女に触れたのは初めてだ。
それを奈那子が気にしていたことに、太一郎はようやく気づかされた。
「もう、わたしでは太一郎さまのお役に立てませんから」
「役? どういう意味だよ」
「……他の男性と……それに、赤ちゃんまで……。太一郎さまのお心に背いてしまいました。ですから、わたしは」
確か『他の男と寝たら、二度とお前を抱かない』そんなことを言ったような気もする。罠に嵌められたとも知らず、太一郎に会いに来る奈那子が目障りで言った言葉だ。
仲間を嗾けて奈那子を襲わせ、『他の男に抱かれた』と難癖を付けて捨ててやろうか、とも考えていた。
折れそうに細い指を彼の手に重ね……涙が頬を伝い落ちる。
「わかって……いるんです。太一郎さまはわたしに同情して下さってるだけだ、って。ご自身もこんなにご苦労なさってるのに……。わたしさえ子供を諦め実家に戻れば、多少のお金は都合して」
「やめろっ! 同情じゃないって言ったろ? なんで、そんな」
「太一郎さまに好きな女性ができたときは、わたしは家を出ますから。もちろん、子供さえ産まれたらすぐに。このお金もいつか必ず……」
「それ以上言うな!」
無意識だろう、奈那子は「太一郎さま」に戻っていた。
太一郎はそんな奈那子のお腹を庇うように、そっと抱き寄せる。
妙なものだが……再会してから四ヶ月も一緒に暮らしながら、彼女に触れたのは初めてだ。
それを奈那子が気にしていたことに、太一郎はようやく気づかされた。
「もう、わたしでは太一郎さまのお役に立てませんから」
「役? どういう意味だよ」
「……他の男性と……それに、赤ちゃんまで……。太一郎さまのお心に背いてしまいました。ですから、わたしは」
確か『他の男と寝たら、二度とお前を抱かない』そんなことを言ったような気もする。罠に嵌められたとも知らず、太一郎に会いに来る奈那子が目障りで言った言葉だ。
仲間を嗾けて奈那子を襲わせ、『他の男に抱かれた』と難癖を付けて捨ててやろうか、とも考えていた。