愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
自動販売機前のベンチに座り、郁美は派手なゼブラ柄のバッグから煙草ケースを取り出した。
彼女がライターを手に、ケースから一本引き出そうとしたとき――大きな手が煙草ケースとライターを一纏めに奪い取った。
「ここは禁煙だ」
太一郎は怒りを露わに、煙草ケースとライターを元のバッグに押し込む。
郁美はムッとした顔をしながら立ち上がり、自動販売機の前まで歩いて行った。
「ねぇ、ビールはないのぉ?」
「――帰れよ」
「随分偉そうじゃない。誰のおかげで今の仕事に就けたと思ってるの?」
「その前に、誰のせいでクビになったか、思い出させてやろうか?」
郁美の台詞に、太一郎は言い返した。容赦ない視線で彼女を睨みつける。
途端に、ロードスターの車内で脅されたことを思い出したのか、郁美は横を向いたのだった。
「とにかく。理由がそれだけなら……ご覧のとおり、大事には至りませんでしたので、お引取りください。わざわざどうも、ありがとうございましたっ」
太一郎は力を入れて礼を言い、郁美に背中を向ける。
そのときだ――。
「ふーん。茜ちゃんのことは、奥さんに言わなくてもいいのかしら?」
郁美はベンチの背に浅く腰を置き、腕を組んで思わせぶりな笑顔を見せる。
「何だよ、それ」
「佐伯茜ちゃんだっけ。女子高生に手を出しちゃうなんて。さすが“バージン・キラー”復活ね」
彼女がライターを手に、ケースから一本引き出そうとしたとき――大きな手が煙草ケースとライターを一纏めに奪い取った。
「ここは禁煙だ」
太一郎は怒りを露わに、煙草ケースとライターを元のバッグに押し込む。
郁美はムッとした顔をしながら立ち上がり、自動販売機の前まで歩いて行った。
「ねぇ、ビールはないのぉ?」
「――帰れよ」
「随分偉そうじゃない。誰のおかげで今の仕事に就けたと思ってるの?」
「その前に、誰のせいでクビになったか、思い出させてやろうか?」
郁美の台詞に、太一郎は言い返した。容赦ない視線で彼女を睨みつける。
途端に、ロードスターの車内で脅されたことを思い出したのか、郁美は横を向いたのだった。
「とにかく。理由がそれだけなら……ご覧のとおり、大事には至りませんでしたので、お引取りください。わざわざどうも、ありがとうございましたっ」
太一郎は力を入れて礼を言い、郁美に背中を向ける。
そのときだ――。
「ふーん。茜ちゃんのことは、奥さんに言わなくてもいいのかしら?」
郁美はベンチの背に浅く腰を置き、腕を組んで思わせぶりな笑顔を見せる。
「何だよ、それ」
「佐伯茜ちゃんだっけ。女子高生に手を出しちゃうなんて。さすが“バージン・キラー”復活ね」