愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
見る間に母親は真っ赤になった。

確かに、どう見てもこのふたりは男女の関係だ。高校生の茜の目にも明らかだろう。


再び親子喧嘩になりかけたとき、


「すべて俺のせいです。本当に申し訳ありませんでした!」


太一郎は大声で謝罪し、深々と頭を下げたのである。



働いた分の給料を受け取り、立ち去る太一郎のあとを、茜が追ってきた。


「ごめんね、太一郎。次の仕事はきっと探すから」

「謝るのは俺のほうだ。巻き込んで本当に悪かった。もういいから……俺には関わるな。藤原の名前を出さないでくれて感謝してる」

「ダメだって! だって……子供、産まれるんでしょ? お金が要るんでしょう?」


涙に潤んだ声で言われると、茜から責められているようだ。

太一郎の胸は苦しかった。罪の意識とは違う、別の痛みが彼を苛む。


「とにかく、戻れよ。あの新田って野郎のことはよくわかんねぇが……何かあったら連絡しろ。俺にできることはなんでもするから」

「それって襲ったことの罪滅ぼし? でも……太一郎も相当ボロボロだよ」

「……るせぇ」


茜は携帯番号が書かれた紙切れを握り締め、太一郎に尋ねた。


「奥さんとか子供とか、私を追い払うための嘘で……私のこと振り向いてくれる確率ってどれくらいある?」

「――俺にそんな価値はない。イタズラ電話はすんじゃねぇぞ」


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